『べらぼう』瀬川(花の井)ロスに捧ぐ。小芝風花の“初々しい演技”が見れる初期5選「魔女の宅急便」も実は…
『べらぼう』で艶やかな姿を見せた小芝風花
NHK大河ドラマ第64作として2025年1月より放送中の『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』。毎回SNSなどでも話題になる本作ですが、中でも視聴者の注目を一身に集めていた一人が、横浜流星演じる蔦屋重三郎の幼馴染で「花の井」という花魁を演じた小芝風花さんでしょう。
存在感と演技力で圧倒的支持を獲得した彼女ですが、その実力はいかにして培われてきたのでしょうか。小芝さんが女優として大輪の花を咲かせる前夜に出演し、その演技力を養っていた初期の出演作を紹介します。
※一部、ネタバレを含みます。
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実写映画『魔女の宅急便』のキキ役を演じていた
まず、意外な出演作としてご紹介したいのは角野栄子さんによる同名小説を映像化した映画『魔女の宅急便』(2014)。宮崎駿によるスタジオジブリのアニメ映画版があまりにも有名ですが、実は2014年に一度実写化が試みられ、その主演に抜擢されたのが、何を隠そう小芝風花さんです。
500人以上の子役が参加したオーディションで、原作者の角野さんより「心がときめいた」と絶賛され、見事、主演に抜擢された小芝さん。幼い頃にフィギュアスケート選手として培った持ち前の身体能力の高さを活かして、魅力あふれるキキ像を体現しています。
映画初主演とは思えない堂々とした存在感を発揮し、そのハツラツとした表情の数々は元気を届けてくれること請け合い。本作における演技が高く評価され、第57回ブルーリボン賞新人賞を受賞した小芝さんは、ここから本格女優への道を歩みだしていくことになります。
横浜流星との共演が見られる『天使のいる図書館』
『べらぼう』の主演俳優である横浜流星さんとは、実は8年前に映画『天使のいる図書館』(2017)で共演を果たしています。
知識は豊富だが、コミュニケーション能力に欠けている図書館司書の吉井さくら。ある日、一人の老婦人が何か困っている様子を見かけた彼女は、思い切って話しかけることを決意。この出会いがさくらの運命を大きく変えていくことになる…というストーリー。
祖母の死をきっかけに、機械的な口調の堅物人間になってしまったという過去を持ち、他人との関わりを持たないようにしてきた女性を、小芝さんは繊細な演技で好演して魅せます。
終始、無表情ではあるものの、老婦人との関係に、かつての祖母との関係を重ね合わせ、その心情に大きな変化が現れる様子を実に見事に体現。その演技は、自身が王道の正統派女優というよりも、様々な役柄を演じ分ける個性派女優であると宣言しているように見て取れ、彼女の女優魂を大いに感じさせる次第です。
また、横浜さんはそんな小芝さん演じるさくらと心を通わせる老婦人の孫役に扮しており、ホッコリさせる関係性を構築。横浜さん演じる幸介と徐々に惹かれあっていく様子は、まるで青春の1ページを見ているかのよう。この頃からすでに抜群の相性を見せつけています。
ダンスの才能も発揮『ガールズ・ステップ』(2015)
映画『ガールズ・ステップ』(2015)では小芝さんの印象をガラリと変えるシリアスな演技に挑戦しています。
5人の女子高生がイベントでパフォーマンスを披露し、必修科目であるダンスの単位を取得しようとすることから幕を開ける。5人は、次第にダンスの楽しさ、素晴らしさに目覚めていき、ダンス部として大会に出場することを目指していく。
主人公のクラスメイトで、根暗な性格が印象的な片瀬愛海役に扮する小芝さん。普段は常に下を向いているような物静かな女子が、裏ではSNSで知り合った年上のサラリーマンと交際中という二面性のある役どころを演じます。
さらには、後にそのサラリーマンの子供を身籠ってしまうという展開も待ち受けており、デビュー間もない女優が演じるには、かなり高難度な少々影のあるキャラクターでした。小芝さんはそんな役柄に臆することなく、真っ向から向き合い、緩急自在の演技と奥深い表情で、壮絶な役どころを熱演して魅せています。
劇中ではダンスの才能も遺憾なく発揮。演技面を初め、十年後に演じることになる『べらぼう』花の井役の役作りに、大いに役立ったと言えるのではないでしょうか。
コメディエンヌの才能爆発『トクサツガガガ』
女優・小芝風花の名前が一躍全国区になった作品と言えば、やはりNHKにて放送された『トクサツガガガ』(2019)でしょう。
本作の主人公は商社勤めのOL・仲村叶。表では‘‘できる女’’を装いながら普通に生活しているが、実は熱狂的な特撮オタク。「女は女らしく」と散々言われ続け育ってきた叶は、オタクであることを同僚や母親に隠しながら生きてきた。しかしそんな秘密を隠し通せない試練が彼女を襲う!
小芝さんといえば、やはりシリアスからコメディまでこなす幅広い演技幅が大きな魅力の女優でしょう。そんな彼女のことコメディセンスという点においては、間違いなく本作によって培われたものだと思われます。
劇中で小芝さんは、特撮オタクの‘‘あるある’’を巧みに演じ切って見せるのだが、その嫌みのない所作が織りなすコミカルな姿は、あまりにも自然体で、コメディエンヌとしての才能を遺憾なく発揮。そのキュートな魅力は、オタクだけにとどまらず、男女問わず多くの視聴者を惹きつけました。
まるでショー!『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』
小芝さんのコメディセンスが光る作品と言えば、2019年にテレビ朝日にて放送された『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』(2019)も外せません。
本作は、ある日、突如として新種のウィルスが蔓延し、人々がゾンビになってしまった世界を舞台としている。さらに、あろうことか新種のゾンビに噛まれてしまうと、四六時中ラップを歌い続ける‘‘ラッパーゾンビ’’へと変貌してしまうという設定が盛り込まれてます。
小芝さんは、ラップ嫌いの主人公・稲穂みのりを演じます。ラップ嫌いの主人公が、ラッパーになりたくない一心で逃げ惑う様子が何とも小気味よく、そんなコミカル演技ととも、ゾンビから逃げ惑う鬼気迫る表情を同時に見せるあたりが、さすがの小芝風花! と拍手を送りたくなるほどの名演技。
さらに、特筆すべきは、茨城弁の使い分け。大阪府出身の彼女にとっては、あまり馴染みがないであろう茨城県の方言を、まるで地元出身であるかのように喋っている姿にはもはや脱帽。クライマックスではラップまで披露しており、もはや本作は「小芝風花の小芝風花による小芝風花のためのショー」だとも感じました。
小芝風花の出発点を再確認
初期から様々な役どころを演じてきた過去が、現在の小芝風花を作り上げているということを再認識するには打ってつけ。どんな場面にも対応できる引き出しの多さは、彼女が若い頃から培ってきた経験の賜物なのでしょう。
(zash)