たまたま誕生日だった同行の記者に、「一生の思い出にって、デュエットを頼んでみなよ」と向けた。免許証を手に、おずおずと明菜に近づき、ぼそぼそと話すと、明菜は立ち上がって、マイクを握ってくれた。
平尾昌晃と畑中葉子のデュエットで大ヒットした「カナダからの手紙」。もしもあなたが一緒にいたらと、記者が歌いだすと、どんなに楽しい旅でしょうと明菜が受ける。
♪ラブレター、フロムカナダ~
で声が合わさる。プロの歌唱は滑らかで力があり、伸びやかであった。
明菜はまだ20代。そして、この後も難破船のように浮き沈みする人生が続いていく。
(聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ)