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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「ハケンの品格」篠原“大魔神”の復活は不安の時代を象徴か

公開日: 更新日:

 篠原涼子主演「ハケンの品格」がスタートした。13年ぶりの続編だが、スーパーハケンの大前春子(篠原)は何も変わっていない。仕事は速くて確実。求められた以上の成果で応えてくれる。ただし残業はしないし、プライベートにも踏み込ませない。常にマイペースだ。

 今回の派遣先は大手食品商社。さっそくロシアとの商談をまとめたり、人気そば店とのコラボ商品の開発を推進したりと大活躍だ。しかし、このドラマの見どころは春子の「仕事ぶり」だけではない。

 派遣差別の権化のような上司(塚地武雅)に向かって、「死ぬほど嫌な目に遭った次の日も、派遣が笑顔で出勤するのは生きるためです!」とタンカを切る。その一方で、中途半端な仕事をしている後輩派遣を「お時給ドロボー!」と叱咤する。大前春子の真骨頂だ。

 そんな春子を見ていて思い浮かぶのが、大映映画「大魔神」シリーズである。村人たちが平穏に暮らしている時、大魔神は現れない。だが、暴虐なる為政者や悪徳商人たちが市井の人々を苦しめる世の中になると、乙女の涙をきっかけに大魔神が復活するのだ。

 この13年間で、派遣の人たちの立場はどれだけ改善されたのか。むしろ最も新型コロナウイルスの影響を受け、苦境に追いやられているのが彼らだ。ハケンの神様、いや篠原大魔神の復活は「不安の時代」の象徴であり、世直しののろしかもしれない。

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