コロナの夏はガラガラの映画館を満喫!前田有一氏が超厳選

公開日: 更新日:

「海辺の映画館―キネマの玉手箱」は必見

 日本でも夏と戦争は切り離せないが、大林宣彦監督の遺作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」はノスタルジーとファンタジーそして厭戦の思いにあふれた大林映画のまさに集大成。閉館が決まった尾道の映画館で、戦争映画のオールナイト上映が行われる中、スクリーンの世界に迷い込んだ若者が体験する“戦争”の本質が描かれる。常盤貴子山崎紘菜ら大林映画でおなじみの顔に加え、成海璃子や新鋭・吉田玲ら魅力的な女優陣によって、いくつもの別れの物語が繰り返される。切ない余韻が心に残る良作だ。

■ジョニー・デップ演じる異色の“終活ドラマ

「グッバイ、リチャード!」は、肺がんで余命半年を宣告された大学教授をジョニー・デップが演じる、異色の“終活”ドラマ。おまけに妻と大嫌いな学長との浮気も発覚、あまりの理不尽にぶちギレた主人公は、まじめな学者生活をかなぐり捨て、酒場でのナンパや講義での毒舌などやりたい放題を始めるが……。職場、人間関係、家族等々、あらゆる“忖度”をやめたとき、人生に何が起きるか。社会人にはなかなかできないそんな思考実験からは、あらゆる観客が今後の生き方について影響を受けること確実だ。

 最後はフードロス問題を斬新な形で暴き出すドキュメンタリー「もったいないキッチン」。日本びいきのオーストリア人映画監督ダーヴィド・グロスが、廃棄食品からおいしい料理を作るため、自前のキッチンカーで日本各地をめぐる旅に出る。大都市のコンビニを皮切りに、目隠しして食事をする禅寺や、地熱の蒸気で地元の人々が調理する温泉町など、日本人でも驚くような各地の取り組みを紹介する。やがて旅の終わりには、監督の人生観を揺るがす出会いが待ち受ける。このコロナ時代、忘れていた大事な何かを思い起こしてくれる好編だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド