<21>チロに「吾輩は猫である」を読んであげたこともあるよ
これはチロがウチに来て初めての正月だね(1989年1月1日)。正月だから陽子は着物着て、チロちゃんにもリボンをつけてあげたんだよ。
チロはね、陽子が春日部(埼玉県)の実家からもらってきたんだ。生後4ヶ月ぐらいだったかな(1988年3月に生後4ヶ月の雌の仔猫が妻・陽子の実家からもらわれてくる)。オレは、猫の匂いが臭くて嫌いでさ、陽子は猫が好きで飼いたいって言ってたけど、ずっと飼わないからねって言ってたんだ。もらわれてきた時も、何だこの匂いは!って。でもね、すぐにコロっていっちゃったね。もうね、可愛いんだよ~。チロはオレが猫嫌いだってわかったんだよね、コロリコロリと離れなくてさ。寝コロリコロリするしさ。あの頃からダジャレで言ってるんだけど、ネコロリコロリって。ネコロリコロリで、やられちゃったんだよ、アハハ(笑)。
それから、陽子とチロと3人家族っていう感じだったね。新聞読もうと広げると、上に乗って邪魔するしさ。原稿書いて文学しようとすると、原稿用紙の上に乗っちゃう。ソファでオレが昼寝すると、チロもオレのオマタの上にうずくまって寝るんだよね。ほら、オレとチロが寝ている写真があるだろ。
『吾輩は猫である』を読んであげたこともあるよ(笑)。
陽子はさ、オレとチロの性格が似てるって…
陽子は、猫は臭いから嫌いだと言ってたオレが猫狂いになって驚いてたね(笑)。
「『ねえアナタ、猫って臭くないでしょ』 私はこの一言を言ってみたくてたまらなかったのだ。『あー臭くないよなあ』と夫は、昔のことなど忘れているような顔で答えた。それからチロをムギュっと抱きしめ、鼻づらにキスをし、『チロちゃんはくしゃくないでしゅよ。いいにおいでしゅよねー』などと、タラちゃん言葉で続けたのだ。私は呆れ返って言葉がでなかった」(荒木陽子の著書『愛情生活』より)
陽子はさ、オレとチロの性格が似てるって、いつも言ってたんだよね。
「いつもいつもチロは大好きなパパの匂いを追いかけている。私の見るところ、夫とチロは性格が似ている。どちらも淋しがりやで情が厚くてクレージーだ。お互いにいい相手にめぐり会えてよかったじゃないの」(同著より)
(構成=内田真由美)