著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<17>平沢勝栄さんとの縁…検挙されたが選挙ポスターを撮影

公開日: 更新日:

 タクシーに乗って、定年退職してドライバーになった運ちゃんに「センセイ、昔、お世話になりました」って言われたことがあるんだよ。スエー(末井昭、編集者・作家)とやっている頃の写真のことをさ、言われるわけ。そのタクシーの運ちゃんにとっては、オレはそれになっているの、エロカメラマンになってるわけ。他の写真は見たことないんだからさぁ(笑)。(1976年にセルフ出版の編集者・末井と出会い、『ニュー・セルフ』『ウィークエンド・スーパー』で連載を開始。81年に末井を編集長とする『写真時代』〔白夜書房〕が創刊され、荒木と末井の最強タッグによる雑誌は熱狂的な人気を集める)

 末井と雑誌やってた頃は、新宿歌舞伎町も元気だったね。いつも夜10時頃に新宿の「DUG」(ジャズ喫茶)で末井と待ち合わせて、歌舞伎町を撮りに行ってた。歌舞伎町を撮るなら正装しなきゃって、スーツ着て撮ってたね。猥雑で元気な歌舞伎町の女たちを撮りまくってた。

 その頃に撮ったのが『東京ラッキーホール』(1990年刊)。東京はいま性風俗だって確信したのが“ラッキーホール”に出くわしたときだね。部屋の壁に松田聖子の写真が貼ってあって、首から下にはヘタクソな絵で裸が描いてある。で、股間のところに穴があいてて、そこから入れるんだよ(笑)。そういう「事」っていうのが東京、「東京はラッキーホール」だってね。

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