“新顔”繚乱の花形歌舞伎! 大抜擢に応える巳之助、鶴松が熱演
もうひとつは、舞踊劇「仇ゆめ」。北條秀司が1966年に書いたもの。タヌキが人間に化けて、それがバレて人間たちに袋だたきにあって、最後は死んでしまう。そういう意図はなかったとしても、弱い者イジメを楽しげに描いているので、「しんみりと」終わるのだが、どこか後味が悪い。なぜタヌキが死ななければならないのか。今年の新作として上演されたら、このストーリーは受け入れられないのではないか。
■染五郎と團子の躍動「三社祭」
第3部は松本幸四郎が初役で「義賢最期」。幸四郎は線が細いので、こういう役は無理と思っていたが、そういう先入観を払拭する。剛毅さと悲壮感が出ていた。
市川染五郎と市川團子の「三社祭」は驚愕である。若いというのは、こんなにもすごいものかと思う。シャープさとスピードと躍動感。日本舞踊というより、新体操だ。だから、ひとによっては、「まだまだ舞踊がわかっていない」となるのかもしれないが、10代にしかできないものが、確実に、そこにはある。
(作家・中川右介)