ナイツ土屋伸之さん 緊張した2008年M-1の舞台裏を明かす「3位になったことは大きかった」
審査員の「圧」がプレッシャーに
他に感じたのは審査員の「圧」がプレッシャーになること。
視線を横から感じますしね。お客さんも審査員をちょっと見ている人がいるのが舞台からわかるんですよ。
「今のボケで審査員は笑ったのか」と気にしているお客さんもいる独特の空間でした。
「これがM-1の決勝なんだ!」と思いました。
会場全体が「ここらで大爆笑が欲しい」という空気のところに、後半に出たNON STYLEが一気にお客さんを味方につけた印象で、僕らを抜いて1位に。2位が敗者復活から上がってきたオードリー。そして最終的に3位になった僕らが決勝大会の最終決戦で闘うことに。
オードリーは「相手としてはイヤだな」と正直思いましたけど、ライブでいつも一緒の仲間でしたから、「ナイツとオードリーが最終決戦で闘うってすごい時代になったな」とうれしい気持ちもあって。
僕はネタを演る前から「ちょっと厳しいかな」と思っていて、そのせいか1本目ほど緊張せず、思い切り演れました。
優勝したNON STYLEのスピードとネタの仕上がりは圧倒的でした。ツッコミもすごかった。テレビで見た人たちにはNON STYLEとオードリーの印象が大きかったと思います。
でも、3位になったことは大きかった。2日後だったか、東洋館の舞台に上がった瞬間、お客さんからの拍手がすごくて。初めて舞台上で泣きそうになりましたよ。優勝できずに帰ってきたにもかかわらず、浅草のお客さんの温かい拍手。その時は「ここがホームなんだ」と改めて思いました。
その年の3位に続いて翌年は4位、その次の年の10年は6位と、出るたびに順位が落ちてしまいました。とくに10年はスリムクラブがドカンとウケた後に僕らが出たのですが、スリムクラブと鮮度が全然違ったんですよね。ハマる予感がまったくなくて。
■地味だけど今まで演ってこられているのはあの一日のおかげ
最初に出た年が一番出来が悪くて、力を発揮できなかった悔しさはあるのですが、ナイツの芸能生活のターニングポイントだったのは確かです。僕らはM-1に出たことで社会現象になったりメチャクチャ売れたわけではない。でも、地味だけど今までテレビやラジオ、舞台で漫才を演ってこられているのはあの一日のおかげじゃないかと。主役じゃなかったところも、自分たちらしい晴れ舞台だったのかもしれません。
僕らが演っている時事ネタは漫才の文化だと思うので、いつまでできるかわからないけど演れるうちは演っていきたいですね。「おまえがその時事ネタ言うな」と言われる時がいつくるかわからないですから。僕らは不祥事を起こしたりしないから大丈夫だとは思いますけど。
(聞き手=松野大介)
▽土屋伸之(つちや・のぶゆき) 1978年10月、千葉県出身。大学の落語研究会の先輩、塙宣之と2000年に漫才コンビ、ナイツを結成。テレビ、ラジオ、寄席で活躍中。
■10月23日~「ナイツ独演会 それだけでもウキウキします」全国ツアー開催