著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「警告」と縁深し 津田沼パルコの閉店と最初で最後となったラジオの公開生放送のこと

公開日: 更新日:

 最初のトークが終わって新曲が流れている間に、痺れを切らしたファンの男が「サングラスとって~」と叫んだ。ほかのファンたちの下卑た笑いがそれに続く。調子に乗った男が、今度はサングラスを外すことをせがむように両手を叩くと、ほかの客たちも手拍子を重ねはじめ、会場は異様な興奮につつまれた。女性タレントはファンを一瞥もせず、豊かな胸の上で両腕を組んだ。すぐ隣に座るぼくには、グラデーションがかったレンズの奥が見えた。柳眉を逆立てた彼女は般若の形相だった。けっきょく一秒もサングラスを外さないまま、「歌手」は20分程度の出演を終えると番組スタッフへの挨拶も端折ってパルコを後にした。

 春がやってきて改編期になると、その番組は打ち切られた。以来、現在にいたるまで、ぼくはさまざまなラジオ局で冠番組を持たせていただいたが、公開生放送をやったことは一度もない。

 彼女はそのあとスポーツ選手と結婚、芸能界を引退した。10年ほど経ったころだろうか、日本の芸能人が愛用することで知られるハワイのホテルのプールサイドで、家族とくつろぐ彼女を見かけた。やわらかい笑顔は優美ささえ感じさせた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情