門脇麦「リバーサルオーケストラ」は作り手の「音楽と音楽家への敬意」が感じられる
門脇麦主演「リバーサルオーケストラ」(日本テレビ系)は、久しぶりに登場した音楽ドラマだ。
リハーサルならぬ「リバーサル」とは、逆転とか反転を意味する。元天才バイオリニスト・谷岡初音(門脇)が、優秀だが毒舌家の指揮者・常葉朝陽(田中圭)と共に、地方の崖っぷちオーケストラを再生する物語だ。
初音には、自分の演奏活動が家族に犠牲を強いていると思い込み、表舞台から消えた過去がある。
欧州で活動していた朝陽は、市長の父(生瀬勝久)から強引に地元オーケストラの再建を任された。門脇も田中も、訳アリの音楽家を硬軟自在の演技でしっかり造形している。
しかも、ヒロインがバイオリニストとして復活することだけでなく、オーケストラという集団とメンバーたちの“生きる道”を探るストーリーになっている点が面白い。
さらに注目したいのは、このドラマがクラシック音楽を大切に扱っていることだ。音楽担当としてNHK・Eテレ「クラシックTV」などで知られる、ピアニストの清塚信也が参加している。
またドラマの中の児玉交響楽団の演奏は、神奈川フィルハーモニー管弦楽団によるものだ。たとえば初音がはじめて楽団と一緒に演奏したロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲も、わずか数分とはいえ十分聴き応えがあった。作り手の「音楽と音楽家への敬意」が感じられるドラマだ。