著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「量」が絶対的担保として表現者の「質」の評価となった時代への挽歌

公開日: 更新日:

 こんな犬も食わぬノスタルジアをなぜ延々と披瀝したかといえば、けっきょく大型連休は一冊の本をじっくりと読みながら過ごし、その視座に少なからず共感を抱いたから。異能の保守思想家・福田和也の新エッセイ集『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』である。

 同書は、2020年の暮れにサンデー毎日で始まった不定期連載「コロナ禍の名店を訪ねる」をまとめて加筆したもの。著者の近影を見てその痩せように言葉をうしなう人もいるだろう。80キロを超えていた体重は30キロ以上減ったらしい。連載時にリアルタイムで読んで2年あまり経ったエッセイを、コロナの感染症法上の位置づけがインフルエンザと同じ5類に移行する直前に再読するのは、なかなかに滋味深い。この2年半に世界とこの国で起こったことを思いだしてみると、少々計算が合わないという錯覚にとらわれるほどだ。

■書名からすばらしい

 まず書名がすばらしい。著者の主張を語ってこれ以上のものはないのでは。このフレーズが大正生まれの保守論客だった福田恆存が生みだしたアフォリズムであることは、本の前半で早くも種明かしされる。重要なのはこのすぐれた箴言が著者と坪内祐三を結びつけていたという事実だ。

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