八千草薫さんは役者たちの“駆け込み寺”…おっとりとした雰囲気で諭してくれた
緒形拳さん、桃井かおりちゃんときて、この方にご登場願わないわけにはいかないでしょう。ドラマでの八千草さんの役どころは3人姉妹のいちばん上。おっとりとしていて、天然ボケの長女役。
素顔の八千草さんもおっとりとしていて、すっごく優しい方。ドラマと違うのは天然ぽいけど、そんなことはないところかな。
仕事の現場ではいろんな問題が起きるんですけど、この人がいれば丸く収まるみたいな人がいるでしょう。「時間ですよ」のときの森光子さんみたいな。タイプは違いますけど、八千草さんもそんな方でした。
ただでさえ個性豊かな役者さんたちが集まって、ひとつの作品を作るわけだから、関係がぎくしゃくすることもあれば、トラブルだって起きますよ。そんなときの駆け込み寺っていうのかな、当事者たちは八千草さんのところに相談にいくわけですよ。
■スタッフがあたふたするような問題も顔色ひとつ変えず…
すると、あの、おっとりとした雰囲気のまま、「そう……それは大変ねえ……」って受け止めた上で、「でも、お互い、悪気があるわけじゃないんだから、時間が解決してくれるわ。いま、声を荒らげたりしても余計にややこしくなるだけよ」って、なだめちゃう。スタッフがあたふたするような問題だろうと、顔色ひとつ変えず、あの雰囲気のまま諭すように……。
あのころすでに30年以上のキャリアがあって、数えきれないほどの修羅場を経験されてきたと思うんです。だからこそ、ちょっとやそっとのことでは動じないのかなぁって。あの優しい表情の裏に、すごく強いものをお持ちだったような気がします。
(構成・藤井優)