真矢ミキさんの今 高学歴キャラに寄り過ぎて演技の迷子に…自分を箇条書きにして気がついたこと
映画「踊る大捜査線」の動員が気になって埼玉の劇場に出かけた
みなさんから、退団後も順調だったと思われているけど、最初の4年半は仕事がありませんでした。でも仕事がないんじゃなく、やりたいことがしっかり決まっていない、ビジョンがないことが理由だったと後から気がつくんです。30代半ば。女盛りと同時に男役をやってきた自分がいて、いろいろトライするけど歯車が噛み合わない。それがわかっていなかったからだと思います。
そんな時に映画「踊る大捜査線」のオーディションを受けて、大きい役をいただくことができてうれしかったですね。
「踊る──」でも私なりに動員のことが気になったので、公開されてから埼玉の劇場とかに出かけました。最初の回やラストの回に一番後ろから、席が埋まっているのを見て安心しました。そうしたのは宝塚のあの経験があったからこそだと思います。
■還暦で「いつも心にケセラセラ」の上梓したのは偶然
還暦になったばかりですが、「いつも心にケセラセラ」の上梓は偶然です。コロナで仕事がストップしたけど、私は割と早く再開した方です。ただ、プラン通りにいかないことも多く、重なった時、時間が空く時の差が結構大きくて。走って走って歩いて歩いてみたいなチグハグな感じ。うまくいかないので自己否定ばかり強くなって、この時も心情を吐露して箇条書きにしてみました。そうすると、年数がたった時の日記のようなもので自分のことを俯瞰して見ることができた。
そして、本で掲載している写真を撮ってくれたフォトグラファーの方が「本にしては」とアドバイスしてくれたのがきっかけです。止まったり進んだりしているうちに今年になった感じです。
これまで私が演じる役といえば、高学歴のカチッとしたキャラクターが多かった。それに寄り過ぎて自分が迷子になっている感じもあった。自分らしさを思い出そうとして、このエッセーつながったのはよかったと思っています。
コロナの影響もありましたね。親友だった岡江久美子さんが亡くなって毎日泣いていました。でも、泣いている場合じゃない、人生はいつ何が起きるかわからない、人生はずっとこうやって進んでいくんだと思った時に、やれることはやっておこうと思いました。こうして出版につながったことに感謝します。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)