三国連太郎と佐藤浩市 確執の父子が「美味しんぼ」で共演
実現したのはデビューから15年。「美味しんぼ」の映画化にあたり、美食家の海原雄山を演じることになった三国は海原の息子の山岡士郎役に佐藤を指名した。劇中、山岡は母を過労死に追い込んだ父を恨んでいるという設定。実際の親子関係にも重なる役柄を演じる2人に注目が集まった。
記者会見で2人は他人行儀に「佐藤浩市くん」「三国さん」と呼び合った。さらに「俳優とはサービス業。親子が親子を演じることに勝るサービスはない」と語る佐藤に対し、三国が「カメラの前で演じる瞬間はサービスではない」と返すなど終始ピリピリムード。三国は「佐藤浩市くんていう人は、ぼくのやり方を否定してきたし、これからも否定していく人だと思う。しかし、血のつながりは否定できない。『運命的な2人』が親子の話で共演することで、予期せぬ何かが出れば」とにこやかに語った。
その後、佐藤に息子が誕生。孫の運動会に三国が姿を見せるなど父子のわだかまりは急速に解けていった。
三国が急性呼吸不全のため亡くなったのは昨年4月。享年90。葬儀では佐藤が喪主を務め、気丈に振るまった。挨拶では「僕と彼の間に介在したのは“役者”という言葉だけ」「父親像という世間一般の方にわかるように説明してくれといわれても、無理です」と去来する複雑な思いをにじませ、「役者らしい送り方はできた」としみじみ語った。