<第5回>「僕の通帳はどこ?」に女将さん激高「お金より稽古でしょ!」
出費といえば、預金の中から親方が下ろしてくれる月2万円ほどの小遣いだけ。第2の人生を歩む準備期間を賄える額はあったはずだが……。
力士が言う。
「引退して初めて自分の通帳を見てビックリ。残高が明らかに少なかったんですよ。おかしいと思って親方に聞いたら、『メシ代とか経費とか、バカにならねえんだよ! 何かとカネがかかってるんだよ!』と怒鳴られた。でも、それっておかしくないですか。だって相撲部屋には、協会から力士養成費(幕下以下1人当たり月7万円)が出ているんでしょ? 何で僕らも食費を負担しなきゃいけないのか。つまり、最初からピンハネする目的で通帳を預かっていたってことですよね」
この力士は一時期、告訴なども考えたが、これまで面倒を見てくれた恩もあるし、何より裁判にはカネがかかる。泣き寝入りをするしかなかった。
幕下以下とはいえ、通帳を親方が管理するのは異例だ。通常、給料は自分で管理する。月給は横綱で282万円、大関で約234万円。関脇、小結が同額で約169万円、平幕は約131万円だ。十両は約103万円となり、これより下の幕下以下は給料が出ない。その代わり、2カ月に1度の本場所手当があり、幕下15万円、三段目10万円、序二段8万円、序ノ口7万円と決まっている。これは01年の昇給を最後に、今年まで14年連続据え置きとなっている。
ちなみに、くだんのピンハネ親方は相撲協会の要職を務めた後、定年退職。それまで自宅を兼ねていた部屋を弟子に譲渡し、東京の一等地に豪邸を建てた。
(つづく)