新谷仁美直撃<2>陸上が嫌いなら何のために走っているの?
新谷仁美(東京五輪 女子長距離代表候補、32歳)
延期になった東京五輪は「国民の反対があるのなら開催する必要はない」と語った女子陸上長距離の新谷仁美(32)。「陸上は仕事。おもしろいとは思わない」という。なぜか……。
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――新谷さんは陸上は仕事だと言いますが、走ることは好きではないのですか。
「高校生の頃は違いますよ。あの頃はドリーマーでした。夢しか持っていなかったし、陸上のことはたぶん好きだったと思う。それが大人になってきて、いろんな言葉などを耳にして、嫌なことも経験した。結局いきついた先は、陸上が嫌いとか、好きとか言ってる場合ではないと。生きるためには働かなければならない。だから、今は生きるために走っている。嫌いだからやらないというわけにはいかない。苦手だから、これには手をつけたくないということも今はない。だからハーフマラソンにも手を出したわけです」
――男子マラソンでは近年、大迫傑、神野大地、川内優輝がプロ選手になっています。陸上のプロ化についてはどんな考えを持っていますか。
「前回も言いましたが、私は企業やスポンサーから1円でも報酬をいただけばプロだと考えています。生きていく上ではお金が必要です。私は引退して会社勤めをしましたが、手っ取り早く稼ぐためにこの世界に戻ってきました。世間的にはあまりよい言い方ではありませんし、たぶん批判を買うような言葉だと思いますが、必死になってやらないといけない世界だということを現役選手に気づいて欲しい。ちょっと人より足が速いとか、ちょっと試合に出ていればOKというのではなく、出た試合で1番になる人は1人しかいませんが、もっと貪欲になってもらいたいのです。命懸けと言ったらオーバーですけど、それだけの対価をいただいているということをわかった上でレースに臨む。練習をしたからOKではないですし、コーチから褒められるのが仕事でもない。企業やスポンサーが望んでいるのは個々の成績であって、私たちは商品だということをわからなければいけないと思います」