熱視線!鈴木誠也の恩師が語る素顔と育て方…ポスティングでMLB挑戦「4年69億円」どう見る

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 米球界から多くの注目を浴びている広島鈴木誠也(27)。かねてメジャー挑戦がウワサされていたこともあり、複数球団による争奪戦が確実視されている。21日にMLBがポスティング公示するや、現地メディアも大興奮。「4年69億円で獲得すべし」と具体的な数字を挙げたメディアもあったほどだ。そんな鈴木の素顔と育成の過程などについて、恩師である二松学舎大付高の市原勝人監督(56)に話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

■本人から電話報告

 ――ポスティングでのメジャー挑戦を知ったのはいつですか?

「うっすらとは聞いていました。本人からは『詳しいことが決まったら連絡します』と。確かネットでポスティング容認の記事が出た2時間前ですね。本人から『今、正式に決まりました』と電話があった。そこは律義なんですよ。もし、ネット記事が出た後で僕に連絡をしようものなら、『おまえ、順番が違うじゃないか』と言われるのが嫌だったのかもしれない(笑い)。実際、遅れたら僕は、そう言ったでしょうから(笑い)」

 ――高校時代はどんな選手でしたか?

「うーん……。誠也はケガの多い選手でしたからね。身体能力は抜群に高いのですが、筋力がその才能についてこない。2年の夏も3年の夏も、万全ではありませんでしたからね。高校時代はケガと期待との闘いだったので、おそらく本人も苦しいイメージしかないと思います」

 ――それでも1年の夏からレギュラーだった。

「当時は入学したばかりで線が細かったですよ。それでも他の子との能力差は明らかでした。体ができていない、ケガが多くて万全じゃない。それでも3年生より打てるし守れてしまう」

■練習嫌いを変えた言葉

 ――今でこそ鈴木は練習熱心ですが、高校時代はあまり練習が好きではなかったとも聞きました。

「最初の頃はそうでしたね。才能は抜群だったので、それほど練習しないでも試合で活躍できてしまう。そんな少年に練習の大切さに気付け、というのも酷ですよ」

 ――どう諭したのですか?

「たとえば勉強については、『野球の練習は一生懸命やるけど、勉強はやらないってことはないんだよ』と。高校時代は野球小僧で楽しくやっていても、プロで職業にしてしまうとそうはいかない。どんなに好きなことでも、職業にすると苦しいものに変わっていく。そこからいかに努力できるか。嫌な練習でも一生懸命やらなければいけない。楽しいからやる、というだけでは将来、苦労するだけですから。『勉強が嫌だといって、しないようだと、プロに行ったら練習をしなくなるよ。先を目指すなら、嫌なことでもやらないとダメだぞ』と。そんな話をしました」

 ――鈴木の反応はどうでしたか?

「素直に聞いてくれました。誠也はヤンチャ坊主に見えますが、性格は素直。手を焼いたことはありません」

1年夏に大谷翔平と対戦

 ――高校時代はエースとしても活躍していました。同じ2012年ドラフトで指名された日本ハム大谷翔平(現エンゼルス)のように、プロから「二刀流で」という声はかからなかったのですか?

「もしかしたら、投手で考えていた球団もあったかもしれない。でも、基本は野手でした。当時、誠也はMAX148キロ右腕とか言われていましたが、結構バットに当てられていたんですよ。外野からの遠投などは凄いボールを投げていたんですけどね。どうもスピードガンほど、打者は速く感じていなかったのかもしれません。そもそも、最初は誠也をエースにするつもりはなかったんです。1年時に竹安大知(現オリックス)という右腕がいたんです。投手としては誠也より全然上。本当は彼をエースにして、誠也を野手に集中させながら、たまに何イニングを投げる……という構想があったのですが、竹安は1年夏、地元静岡の伊東商に転校してしまったんです。ただ、誠也は投手を兼任することで肩もさらに強くなったので、結果的に良かったのかなと」

 ――スカウトの間では「投手なのに全力疾走する」と、その姿勢が評価されていました。

「そこは本人にも言いました。『打ったり守ったりするのは十分評価されているんだから、今更おまえの能力を見に来るスカウトはいないぞ。彼らは能力より、野球への姿勢を見に来るんだ』と。実際、ウチを視察したスカウトは『鈴木くんは投手をやりながらも全力疾走やスライディングと、走者としても手を抜かないのが魅力ですよね』と言う。それを誠也に『な? 言った通りに評価してくれるだろ?』なんて伝えると、ますます手を抜かなくなる。誠也は素直な性格だし、そこは僕ら大人の知恵ですよ(笑い)」

 ――高校時代からメジャーへの願望はあったのでしょうか。

「いや、なかったと思いますよ。誠也は野球をするのは好きですが、プロの誰々が好きとか、野球オタク的なところはなかった。広島に指名された時なんて、『ちゃんと歴代OBの顔と名前は覚えておけよ。この人、誰? みたいな顔するなよ』と忠告したくらいです(笑い)。誠也はとにかく凄いヤツと対戦したい、というタイプ。メジャー願望もプロで実績を残すようになってから芽生えたものでしょう」

 ――プロ入り前からメジャーを見据えていた大谷とは違いますね。

「そうそう、大谷くんといえば、2人は高校時代に対戦しているんです」

 ――何年生の時ですか?

「1年の夏、ウチが東北遠征に行った時に練習試合をしました。そこで大谷が投げていたんですが、ウチの打者で唯一まともに打てたのは誠也だけ。左中間への二塁打です。その時、僕も誠也に『これがプロに行く投手だ。おまえもプロに行きたいなら、このクラスの投手をライバルと思って戦わないといかんぞ』と言いましたよ。誠也も当時から間違いなくプロに行くレベルの選手だと思っていましたからね。結局、高校時代の対戦はこの一度きりでしたが、そんな2人がともにメジャーというのは感慨深いものがあります」

■お金に執着しない

 ――メジャー球団による争奪戦で、巨額の契約になるとの見方もありますね。

「誠也はお金に執着しないし、金額で判断する性格じゃないと思いますね。高級品とかモノにあまり執着しないし、飾るところもない。(コロナ禍前に母校の)ウチに来ていた時は、『そんな格好でいいの?』と言いたくなるようなジャージーみたいな姿でしたから(笑い)」

(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ)

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