元“年俸120円Jリーガー”安彦考真の「The Way to RIZIN」最終アピールの舞台で見事勝利!
大晦日のRIZIN参戦オファーが届くのを信じて待つ!
2021年大みそかの「RIZIN.33」(さいたまスーパーアリーナ)まで約2週間。夢の大舞台を目指し、格闘家に転身した元年俸120円Jリーガー・安彦考真(43)が10日、都内で行われた「EXECUTIVE FIGHT~武士道~」でラストアピールを見せた。対戦相手は、2019年テコンドー全日本ジュニア王者の裕次郎(17)。ラウンド(R)2にダウンを奪い、判定で勝利。デビュー3戦全勝という実績を引っ提げて吉報を待つーー。
◇ ◇ ◇
4月のデビュー戦でタイガーマスク姿の会社役員・佐々木司(38)、8月の第2戦で格闘技歴7年の会社社長・小比田隆太(40)にそれぞれKO勝ちした安彦。今年頭から格闘技に本格参入した新人は華々しいスタートを切ったが、RIZINからのオファーはいまだ届かない。
大晦日のビッグファイトには、朝倉未来・海兄弟や矢地祐介らトップ選手の参戦が決定。カズ(三浦知良=横浜FC)の次男・孝太の総合格闘家デビューも発表されているが、安彦は「俺は諦めない。まだ打つ手はある」と言い聞かせ、この3か月間、プロ格闘家と連日3時間に及ぶ猛練習をこなしてきた。
それに加えて、ウサイン・ボルトとの練習から理論を体得し、「走りの学校」を主宰する和田賢一に師事。初動で相手を圧倒する術を身に着け、意気揚々と最終アピールの場に乗り込んできた。
4月の練習マッチで完敗した相手
対戦相手の裕次郎とは26歳差。日頃から一緒に練習する間柄で、熱烈オファーを受けた時はやりづらさを感じたという。しかも敵はテコンドー王者ならではのキックの鋭さを備えており、4月の練習マッチでは完敗。8カ月が経過した今も勝てる保証はなかった。
それでも、安彦には日々、鍛え上げてきた屈強な肉体と強靭なメンタリティーがある。日本刀を模した刀を携えてセコンドに入った盟友・YSCC横浜(J3)のシュタルフ・悠紀・リヒャルト監督(来季はJ3・長野パルセイロ監督)の力強いサポートを受け、彼は気合を漲らせていた。そしてゴングが鳴るや否や、向かってきた相手にひるむことなく、膝蹴りとパンチを浴びせて年長者の風格を見せつけた。
思った以上に闘争心があった
R2に入るとさらにギアを上げ、一気にダウンを奪う。直後には2人揃ってリング外に転落するアクシデントも起きたが、それに動じることなく最後まで優勢に試合を運んだ。最終的には小比類巻貴之らジャッジ全員が優勢と判定。デビュー3連勝が決まり、安彦は高々と右手を突き上げ、歓喜を爆発させた。
「心の格闘家なら許すけど、殴り合いは許さない」と転身に大反対していた両親も初めて会場を訪れ、息子の雄姿を目の当たりにして涙ぐんでいた。
「(裕次郎は)強かったですね。思った以上に闘争心がありました。だけど絶対に逃げるわけにいかなかった。真正面からぶつかって、最後は気持ちの戦いだなと思いました」と安彦が言えば、敗れた17歳も「どんなに技術や経験値があっても最後は気持ち。それがよく分かりました」と神妙な面持ちで語った。
まさに「元年俸120円Jリーガーの真髄」を体いっぱいに示した形だが、本当に大事なのは大願成就するか否か、だ。
安彦自身は「(RIZIN主催者の)榊原信行CEOには人づてに連絡を取ってもらっているんで、僕のことは知ってると思うけど、もっと話題を作らなきゃダメ。悪あがきをあと10日、正々堂々とやって、俺を出さざるを得ないように持っていきたい」と語気を強める。
101歳で亡くなったサバイバーの孫
仮に叶わなかったとしても、格闘家の道を諦めるつもりはない。
「来年のRIZINを目指すのか、立ち技打撃格闘技のRIZEという枠に視野を広げるのか。僕はどっちもいけるスタイルなんで、面白さを出していけるのかな、と。いずれにしても、大舞台に立って初めて見えるものがある。僕の(格闘技挑戦の)最後がどこなのかは、それで分かると思います」と飽くなきチャレンジを続ける覚悟だ。
闘争心の源となっているのが、11月に101歳で亡くなった祖母の存在だ。
「自分は明治から大正、昭和、平成の激動の時代を経て令和を生きてきたサバイバーの孫。いい形で次の時代にバトンタッチする使命がある。金のために姑息な動きをする人が多い昨今、このままの日本ではダメ。若い人にどんどん投資する社会にしたいんです」
前々からこう言い続けてきた安彦を天国から見守り続ける人のためにも、彼はどこまでも前へ前へと突き進んでいく。