日大の病巣を「ルポ大学崩壊」の著者が抉る「スポーツ優遇の無法地帯にメスを入れない限り…」
いまだ混迷が続く日大アメフト部の違法薬物事件は、一部活の不祥事という範疇を超え、大学のガバナンス問題にも発展している。著書に「ルポ大学崩壊」(ちくま新書)がある、ジャーナリストの田中圭太郎氏は一連の問題をどう見ているのか。
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──4日に林真理子理事長が謝罪会見を行いました。
「改革案、改善点など出るには出ましたが、曖昧すぎる、という印象ですね。第三者委員会の調査報告書が出てから初めての会見でしたが、はっきりしたことをほとんど言わずじまいでした。競技スポーツ部の扱いに関しても、どこまで改革、改善に着手できるか疑わしい。この競技スポーツ部の扱いが、田中英寿元理事長時代から続く日大の大きな問題のひとつです」
──日大の組織図を見ると、学長、副学長が統括する部署ですね。
「現在の私立大学は、おおざっぱに言えば理事長と学長の2人のトップがいます。しかし、日大の競技スポーツ部は学長の管轄でありながら、田中元理事長の直轄に近い、ほぼ独自の組織となってしまっているのです」
──何が問題なのですか。
「田中元理事長時代から、日大はスポーツ優先の方針です。つまり、運動部やそれを統括する競技スポーツ部が特別扱いされ、ガバナンスや学校側の管理が及ばない聖域のようになってしまっているのです。2018年のタックル問題以前の話ですが、単位に関わる試験などで、名前と『私はアメフト部です』という一文だけ書いて提出する部員がいたと聞いています」
──アメフト部だから無条件で単位をよこせ、と。
「教員も困っていましたよ。21年に田中元理事長が逮捕された直後、教員の有志百数十人が、入試や採用、進級などを含め、『スポーツ優先の現状を改革すべし』と意見書を出しています。しかし、何も手をつけられていないのが現状です。林理事長は4日の会見で『競技(スポーツ)部に対する学校の関わり方を見直す』『寮の監督体制の強化や、入試制度の見直しもする』と話していました。とはいえ、会見ではそのための具体的な案が何も出ていなかったので、どこまでメスを入れられるのか……」