週間読書日記
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石田夏穂(作家)
8月×日 今年の夏はどこかに行こう、と、春先あたりから考えていたのに、またまたノープランで盆を迎えてしまった。布施英利著「人体、5億年の記憶」(光文社 1430円)を読む。本書は「つまり、人の体はなぜ…
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山崎ナオコーラ(作家)
8月×日 新幹線で北九州市へ向かう。「源氏物語」について北九州市文学館と九州芸術祭文学カフェでトークをするのが目的だ。わたしは北九州市生まれだ。とはいえ久しく訪れていないのでガイドブックを買う。地球の…
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枡野浩一(歌人)
8月×日 選者として今年4月からレギュラー出演しているEテレの番組「NHK短歌」収録日。毎回、各界の著名人をゲストに呼ぶことができるのだが、その候補として面識ある映画監督の名前をいくつか、プロデューサ…
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一ノ瀬俊也(埼玉大学教養学部教授)
7月×日 今年3月までの2年間、所属学部の管理職をしていた。一見平和な地方国立大学の人文系学部も水面下ではいろいろな事件が起こりつつあり、私の任務は学部長を補佐してそれらを未然に防ぐことだった。 …
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吉村喜彦(作家)
7月×日 新作の小説「江戸酒おとこ 小次郎酒造録」(PHP研究所 957円)のプロモーションで大阪に。書店や新聞社、ラジオ局をまわる。はじめての時代小説なので、みなさんの反応にドキドキ。 文化…
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門井慶喜(作家)
7月×日 世の中にはネコマンガ、ネコブログ、ネコ動画があふれている。これらを少し見るだけで荒んだ心がいかに深く癒やされることかと力説する人にも何人も会ったが、こっちとしては、いまさら流行に乗るのもおも…
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泉麻人(コラムニスト)
6月×日 小林照幸著「死の貝」(新潮社 737円)を読了。〈Wikipedia3大文学 幻のノンフィクション待望の文庫化!〉と帯に入っているけれど(他の2つは新田次郎の「八甲田山死の彷徨」と吉村昭の「…
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町田康(作家)
6月×日 人間は今を基準に生きているというか、頭では過去が現在があり、それが未来に続いていると考えるけれど、感覚的には今のことしか感じられず、昔の事についても今を基準に考えがち、と俺なんかは考える。だ…
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松下隆一(作家)
6月×日 ウィリアム・フォークナー著「野生の棕櫚」(加島祥造訳 中央公論新社 1430円)を読む。帯に「二重小説」と書かれている通り、全く違う2つの物語が交互に展開し、1本の長編作品となっている。自由…
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西尾潤(作家)
5月×日 作家道と武道の「道」はきっと通じているぞ、と琉球空手道場に通い始めた。まずは師範の本を手に取ってみる。今野敏著「琉球空手、ばか一代」(集英社 524円)。少年、青年、中年と移ろう師範の空手愛…
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黒木亮(作家)
5月×日 1週間の休暇で家内とギリシャのミコノス島を訪れる。ここに来るのはエジプト留学時代以来、39年ぶり。垢ぬけたブティックなどが増え、近代化した風景に時の流れを感じる。 風が爽やかで気温は…
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北村匡平(東京工業大学准教授・映画研究者)
5月×日 物書きを生業としているので、文章の書き方に関する本は意識して目を通すようにしている。こうした類の本は文章の組み立て方や接続詞のテクニックなど「内容」に焦点をあてたものが多いが、阿部公彦著「文…
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稲垣えみ子(フリーランサー)
5月×日 郵便受けを開けると、あら文芸誌「すばる」の入った封筒が♡ 大昔に短いエッセーを寄稿して以来欠かさず送って頂いておりまして、今や文芸誌なんて無縁だった日々が嘘のような虜っぷり。何が最高って、何…
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松本俊明(作曲家、ピアニスト)
5月×日 齋藤陽道著「よっちぼっち 家族四人の四つの人生」(暮しの手帖社 2200円)を読む。 「よっちぼっち」とは、著者の造語である。ろう者である自身と妻、耳の聞こえる聴者である子ども2人から…
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小峰ひずみ氏(批評家)
4月×日 家族で遠戚との食事に呼ばれる。父母が世話になった人たちだが、私や妹も親しい。宴会で結婚の話になる。結婚式の動画をYouTubeでみなが観る。新婦が父から新郎に「渡される」クライマックス。 …
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上田秀人(作家)
3月×日 畏友N氏のお誘いを受けて、京都上七軒春の踊りを見に行った。客席のほぼ半分が外国の方々で、同時通訳がないにもかかわらず舞台に夢中になっていた。芸事というのは、言語文化を超越するのだなと認識をあ…
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嶺里俊介(作家)
3月×日 井上雅彦監修「乗物綺談 異形コレクションLVI」(有栖川有栖ほか著 光文社 1320円)読了。愛読しているシリーズの最新刊。作家16名が持つ、それぞれの尖った世界が連なる。入院時必携。 …
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澤田瞳子(作家)
4月×日 一昨年から「知らないことにチャレンジ」をモットーに、色々な「初めて」に挑んでいる。農業、酒造り体験、カクテルコンペ……お声がけがあれば何でも経験と出かける。 先日もお誘いを賜り、女優…
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高嶋哲夫(作家)
3月×日 東京で新幹線を降り、ホームを見回す。人、人、人。それも大きなトランクを持った外国人が多い。思わず、世界を死と混乱に追い込んだ、コロナウイルスはどこに行ったと、叫びたくなる。神戸の田舎に住んで…
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小林信也(作家、スポーツライター)
3月X日 夜、原稿を書いていると、「じいじわねたかなあ」とLINEが入った。送り主は5歳の孫娘。少し前にスタンプのやりとりを始めたときは意味不明の平仮名やアルファベットの羅列だったが、突然、読み取れる…