週間読書日記
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田中雄二(映像プロデューサー)
4月×日 去年「シン・YMO」(DU BOOKS 4180円)というYMO評伝で取り上げた、高橋幸宏、坂本龍一の2人のメンバーを立て続けに失った。思春期に影響受けてヒネクレ者に育った自分には、テレビの…
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小熊英二(慶應義塾大学教授、社会学者)
4月×日 本当の知性は時や場所を超える。見田宗介著「白いお城と花咲く野原」(河出書房新社 2640円)は1980年代の論壇時評集の再刊だが、分析の鋭さや表現の深さは現代でも古びない。「自由という名の非…
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下村敦史(作家)
2月×日 サグラダ・ファミリアの謎を巡る“ガウディ・コード”とも言うべき、僕の新刊「ガウディの遺言」(PHP研究所 1980円)で書店員さん数人とZOOMで懇親会。作中に書いたバルセロナの描写やガウデ…
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大森望(書評家・翻訳家)
3月×日 本紙でもおなじみだった書評家の北上次郎(目黒考二)氏が、この1月、突然世を去った。同業の大先輩にあたる北上さんとは、書評対談集「読むのが怖い!」シリーズを3冊も出したり、もう30年以上も親し…
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森沢明夫(小説家)
3月×日 某新聞で連載した小説の原稿を、単行本化に際して書き直すことにした。プロローグを書き加えたり、登場人物を減らしたり、大事なシーンを書き換えたりと、なかなかの大手術だったのだが、先日ようやくその…
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奥野修司(作家)
3月×日 昨年は対面での取材ができなかったせいか、今年は1月から各地を飛び歩いている。そんな旅先でたまたま書店をのぞいて見つけたのが武田惇志、伊藤亜衣著「ある行旅死亡人の物語」(毎日新聞出版 1760…
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北村匡平(東京工業大学准教授・映画研究者)
3月×日 コロナ社会の到来と共にケア論ブームとなった。その立役者・小川公代著「ケアする惑星」(講談社 1760円)を読む。「アンネの日記」に関して、父親オットーの編集版では、アンネが家父長的価値に反逆…
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島田裕巳(宗教学者・文筆家)
2月×日 著者から贈られた橋爪大三郎「アメリカの教会」(光文社 1210円)を読んだ。新書なのに476ページもある。アメリカの教会の歴史を扱ったもので、大勢の学者が執筆にたずさわった「アメリカの宗教百…
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竹内薫(サイエンス作家)
2月×日 電気代の請求書を見て目の玉が飛び出そうになった。燃料費高騰と円安のせいで仕方ないのだが、誰かが意地悪でもしているのかと疑いたくなる。 そこで手に取ったのがサイモン・マッカーシー=ジョ…
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加来耕三(歴史家・作家)
2月×日 昨今、法律や法廷をテーマとした、いわゆる“リーガルドラマ”が頻繁に放送されている。本格派からコメディタッチのものまで、実に多種多様である。 法律ものではないが、昨年放送されたNHK大…
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奥野克巳(立教大学教授・文化人類学者)
1月×日 ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんからお誘いいただいて、2022年10月に「本格雑談くちをひらく」の対面イベントに出演した。その場で吉田さんから、私自身がここ17年ほど通いながら文化人類…
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梶よう子(作家)
1月×日 昨2022年は、鉄道開業から150年。東京駅直結の東京ステーションギャラリーで、鉄道に関連する絵画、写真によって歴史を辿った展覧会の図録「鉄道と美術の150年」(左右社 2970円)を入手し…
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安部龍太郎(作家)
1月×日 近頃ようやくトンネルの出口が見えてきた。一昨年7月に日経新聞で連載を始めた「ふりさけ見れば」が終わりに近付いたし、今年の正月から北國新聞などで連載をはじめた「銀嶺のかなた──利家と利長」も軌…
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井川香四郎(作家)
1月×日 小学6年のとき、精神科医をしていた同級生の父親に案内されて、閉鎖病棟を見学したことがある。二重の鉄扉の奥には、鉄格子の部屋が廊下の両側に並んでおり、手先を差し出して「先生! りんごちょうだい…
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風野真知雄(作家)
1月×日 今年、幕末を舞台にした“くノ一物”を書くことになっていて、どんなキャラクターにしようか模索中である。私は出版点数が多いので、思いつくまま適当に与太話を書き散らかしていると受け取られがちだが、…
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絲山秋子(作家)
12月×日 庭のコブシの木が大きくなって、落ち葉の量が増えた。すっかり片付けても翌朝にはまた降り積もっている。黄金色の大きな葉っぱを見て私は「これが全部諭吉だったらいいのに」と毎年同じことを言っている…
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花房観音(作家)
12月×日 今年の5月に繁華街で倒れ緊急搬送されしばらく入院していた。不調を加齢と更年期のせいにしていたら、実は心臓が悪くなっていて「心不全」と診断された。意識が遠のいて「死」が見えた。結局、助かり回…
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山本幸久(作家)
11月×日 池袋新文芸坐へ今村昌平監督「人間蒸発」(1967年)を見にいく。露口茂が本人役で登場、蒸発した男性の行方をその妻とともに追い、監督自らも出演する。一応、ドキュメンタリーなのだが虚々実々入り…
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南杏子(医師・作家)
11月×日 診療の合間、心温まる絵本に出合った。ジョナ・ウィンター著「ちいさいフクロウとクリスマスツリー ほんとうにあったおはなし」(福本友美子訳 鈴木出版 1650円)。作者は環境問題と社会正義をテ…
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中澤日菜子(作家)
11月×日 大学2年生の次女が「ツイッターで見て美味しそうだったから」といって、中央アジアの米料理「プロフ」を夕飯に作ってくれる。ピラフに似た料理で、米を豆やマトンと炒め煮にした料理。「うまいうまい」…