週間読書日記
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宮内悠介(作家)
10月×日 翌年に出す短編集の直しをやる。夕食後、文庫化した青木知己著「Y駅発深夜バス」(東京創元社 880円)を読む。聞くところ、表題作が伝説の短編らしい。読者への情報開示の順番、謎や伏線が鮮やかで…
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福島泰樹(歌人、絶叫ミュージシャン)
9月×日 毎月10日、吉祥寺のライブハウス「曼荼羅」で月例「短歌絶叫コンサート」を開始してから39年目の秋を迎える。月夜の晩もあれば嵐の夜もあった。ピアノの永畑雅人、頭脳警察のTOSHIこと石塚俊明が…
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高野秀行(ノンフィクション作家)
8月×日 7月下旬に私は「イラク水滸伝」(文藝春秋 2420円)という新刊を出したのだが、ほぼ同じ時期に、早稲田大学探検部の後輩で冒険家・作家の角幡唯介も新刊「裸の大地・第二部 犬橇事始」(集英社 2…
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黒木亮(作家)
8月×日 ギリシャやスペインが40℃超の熱波に見舞われ、山火事が起きたりしているが、ロンドンは毎日18~22℃で、肌寒いくらい。昔、友人のシリア人バンカーが「英国の夏は、スコットランドでコテージを借り…
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中島京子(小説家)
8月×日 8月だったので、新聞やネットで戦争関連の記事をいくつも読んだ。どなたかが、古井由吉さんの空襲体験について書いているものを読んで、なんとなく読みたくなって古井由吉著「半自叙伝」(河出書房新社 …
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吉川英梨(作家)
8月×日 去年、住み慣れた京王線沿線から中央線沿いに引っ越した。仕事柄自宅から出ることが少なく、沿線と言っても電車に乗るのは月に1、2回。まだ私は中央線をディープに知らない。 そんな中、本屋で…
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間村俊一(装幀家・俳人)
7月×日 極暑続く。品川「船清」にて納涼屋形船。5時出航。椅子、テーブル備え付けの豪華船。天婦羅旨し。お台場の風景が窓外を流れて壮快。 珍しく時代小説の装幀依頼が続く。極めつけは安部龍太郎著「…
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荻原浩(作家)
7月×日 それにしても暑い。地球は壊れかけているんじゃないだろうか。我々にできるのは冷房の温度を上げること──という段階はとうに過ぎている気がする。無駄にエアコンを使わないようにと考えても、ニュースで…
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成田龍一(歴史学者)
7月×日 「週刊少年ジャンプ」に連載中のマンガ、雲母坂盾作「ドリトライ」の打ち合わせのために集英社に。「ドリトライ」は、敗戦直後の東京で、主人公「大神青空」少年がボクシングによって、混乱の時期を生き抜…
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山崎ナオコーラ(作家)
7月×日 早朝、家を出る。午前中の子守は書店員の夫が遅番なので託す。私はカフェでエッセー執筆。その途中、10時から発売開始の音楽チケットをネットで購入。「障害」のある人にも開かれたコンサート。秋になっ…
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酉島伝法(作家)
5月×日 「ユリイカ2023年7月号 特集=奇書の世界」(青土社 1980円)で円城塔さんとZOOM対談するため、朝から本を集める。書斎が暑すぎるがエアコンのリモコンが見つからないまま時間になり、対談…
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泉麻人(コラムニスト)
7月×日 秋の頃に「昭和50年代」を切り口にした本を出すこともあって、その時代の人や風俗を扱った本には敏感になっている。“ピンク色のジュリーの肖像”の表紙が目につく島崎今日子著「ジュリーがいた 沢田研…
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山本一力(作家)
5月×日 金沢での取材後、特急サンダーバードで大阪へ。着後、地下鉄利用で新世界に向かった。 「じゃんじゃん横丁」の八重勝で串カツをたらふく食べるためである。 目の前のにいさんが、揚げたて…
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石井光太(作家)
6月×日 日本に暮らす外国人の犯罪をテーマに漫画原作を書いている。毎号、漫画の末尾に外国レストランのコラムを執筆しなければならないため、最近はあちらこちらで外国料理を食べ回っている。 この日は…
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町田康(作家)
6月×日 朝から原稿を書く。書きまくる。そして終わったら。やることがなにもない。だけどもう頭の中からはなにも出て来ない。そこで寝台に寝転がって本を読む。読みまくる。今日読んだのは、井伏鱒二著「荻窪風土…
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高橋克彦(作家)
6月X日 あと2カ月足らずで76歳の誕生日を迎える。「写楽殺人事件」で乱歩賞を頂戴したのが36歳のときだったので、かれこれ40年となるわけだ。よくもまぁこれだけ永く続けてこられたものだ、という感慨はや…
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枡野浩一(歌人)
5月×日 地上5階の庭で12鉢のバラを育てている。木村卓功著「新しいバラ」(NHK出版 1870円)を購入。病気に強く、美しく、香りのよい新品種を世に出してきた「育種家」である著者のバラ。まだ1鉢も持…
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堂場瞬一(作家)
5月×日 3年半ぶりに海外へ行こうと企画中。飛行機とホテルを予約して、コロナ禍以前に馴染みだったレストランやショップが営業しているかどうか調べる──そんな中、つい手に取ってしまったのがクレア・マッキン…
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金井真紀(文筆家・イラストレーター)
5月×日 肌寒いので、四股を踏む。阿炎のような美しいフォームをイメージして足を上げるのだけど、3回に1回はよろける。照ノ富士の土俵入りみたいにドスン! と足を踏みしめたいが、ここは集合住宅。そーっと着…
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澤田瞳子(作家)
5月×日 晴れ。まだ公表できないのだが、あるプロジェクトが関西で始動しており、その打ち合わせに大阪へ。なにせ家に籠りがちな仕事のため、電車での遠出はそれだけで私には非日常だ。だが外出が嫌いなわけではな…