週間読書日記
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町田康(作家)
6月×日 朝から原稿を書く。書きまくる。そして終わったら。やることがなにもない。だけどもう頭の中からはなにも出て来ない。そこで寝台に寝転がって本を読む。読みまくる。今日読んだのは、井伏鱒二著「荻窪風土…
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高橋克彦(作家)
6月X日 あと2カ月足らずで76歳の誕生日を迎える。「写楽殺人事件」で乱歩賞を頂戴したのが36歳のときだったので、かれこれ40年となるわけだ。よくもまぁこれだけ永く続けてこられたものだ、という感慨はや…
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枡野浩一(歌人)
5月×日 地上5階の庭で12鉢のバラを育てている。木村卓功著「新しいバラ」(NHK出版 1870円)を購入。病気に強く、美しく、香りのよい新品種を世に出してきた「育種家」である著者のバラ。まだ1鉢も持…
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堂場瞬一(作家)
5月×日 3年半ぶりに海外へ行こうと企画中。飛行機とホテルを予約して、コロナ禍以前に馴染みだったレストランやショップが営業しているかどうか調べる──そんな中、つい手に取ってしまったのがクレア・マッキン…
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金井真紀(文筆家・イラストレーター)
5月×日 肌寒いので、四股を踏む。阿炎のような美しいフォームをイメージして足を上げるのだけど、3回に1回はよろける。照ノ富士の土俵入りみたいにドスン! と足を踏みしめたいが、ここは集合住宅。そーっと着…
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澤田瞳子(作家)
5月×日 晴れ。まだ公表できないのだが、あるプロジェクトが関西で始動しており、その打ち合わせに大阪へ。なにせ家に籠りがちな仕事のため、電車での遠出はそれだけで私には非日常だ。だが外出が嫌いなわけではな…
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石原壮一郎(コラムニスト)
4月×日 このあいだ還暦を迎えました。これからの人生のテーマは「いかにゆるく生きるか」でしょうか。他人と競ったり背伸びしたりしながら、幸せな日々が過ごせるとは思えません。 力を抜く極意を学ぼう…
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田中雄二(映像プロデューサー)
4月×日 去年「シン・YMO」(DU BOOKS 4180円)というYMO評伝で取り上げた、高橋幸宏、坂本龍一の2人のメンバーを立て続けに失った。思春期に影響受けてヒネクレ者に育った自分には、テレビの…
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小熊英二(慶應義塾大学教授、社会学者)
4月×日 本当の知性は時や場所を超える。見田宗介著「白いお城と花咲く野原」(河出書房新社 2640円)は1980年代の論壇時評集の再刊だが、分析の鋭さや表現の深さは現代でも古びない。「自由という名の非…
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下村敦史(作家)
2月×日 サグラダ・ファミリアの謎を巡る“ガウディ・コード”とも言うべき、僕の新刊「ガウディの遺言」(PHP研究所 1980円)で書店員さん数人とZOOMで懇親会。作中に書いたバルセロナの描写やガウデ…
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大森望(書評家・翻訳家)
3月×日 本紙でもおなじみだった書評家の北上次郎(目黒考二)氏が、この1月、突然世を去った。同業の大先輩にあたる北上さんとは、書評対談集「読むのが怖い!」シリーズを3冊も出したり、もう30年以上も親し…
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森沢明夫(小説家)
3月×日 某新聞で連載した小説の原稿を、単行本化に際して書き直すことにした。プロローグを書き加えたり、登場人物を減らしたり、大事なシーンを書き換えたりと、なかなかの大手術だったのだが、先日ようやくその…
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奥野修司(作家)
3月×日 昨年は対面での取材ができなかったせいか、今年は1月から各地を飛び歩いている。そんな旅先でたまたま書店をのぞいて見つけたのが武田惇志、伊藤亜衣著「ある行旅死亡人の物語」(毎日新聞出版 1760…
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北村匡平(東京工業大学准教授・映画研究者)
3月×日 コロナ社会の到来と共にケア論ブームとなった。その立役者・小川公代著「ケアする惑星」(講談社 1760円)を読む。「アンネの日記」に関して、父親オットーの編集版では、アンネが家父長的価値に反逆…
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島田裕巳(宗教学者・文筆家)
2月×日 著者から贈られた橋爪大三郎「アメリカの教会」(光文社 1210円)を読んだ。新書なのに476ページもある。アメリカの教会の歴史を扱ったもので、大勢の学者が執筆にたずさわった「アメリカの宗教百…
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竹内薫(サイエンス作家)
2月×日 電気代の請求書を見て目の玉が飛び出そうになった。燃料費高騰と円安のせいで仕方ないのだが、誰かが意地悪でもしているのかと疑いたくなる。 そこで手に取ったのがサイモン・マッカーシー=ジョ…
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加来耕三(歴史家・作家)
2月×日 昨今、法律や法廷をテーマとした、いわゆる“リーガルドラマ”が頻繁に放送されている。本格派からコメディタッチのものまで、実に多種多様である。 法律ものではないが、昨年放送されたNHK大…
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奥野克巳(立教大学教授・文化人類学者)
1月×日 ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんからお誘いいただいて、2022年10月に「本格雑談くちをひらく」の対面イベントに出演した。その場で吉田さんから、私自身がここ17年ほど通いながら文化人類…
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梶よう子(作家)
1月×日 昨2022年は、鉄道開業から150年。東京駅直結の東京ステーションギャラリーで、鉄道に関連する絵画、写真によって歴史を辿った展覧会の図録「鉄道と美術の150年」(左右社 2970円)を入手し…
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安部龍太郎(作家)
1月×日 近頃ようやくトンネルの出口が見えてきた。一昨年7月に日経新聞で連載を始めた「ふりさけ見れば」が終わりに近付いたし、今年の正月から北國新聞などで連載をはじめた「銀嶺のかなた──利家と利長」も軌…