本の森
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「ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級」新井潤美著
19世紀のヨーロッパ小説、とくにイギリス小説を読むときに欠かせないのは階級意識だ。貴族が属するアッパークラスから一般の労働者が属するワーキングクラスまで、階級によってその所作から言葉まで異なり、その…
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「物価とは何か」渡辺努著
ロシアのウクライナ侵攻による原油価格の高騰などもあり、新年度に入ってから日用品や食料品の値上げが相次いでいる。近年の日本はデフレ傾向にあり、このところの消費者物価指数は1%前後を推移していたが、パン…
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「悪い言語 哲学入門」 和泉悠著
先のアカデミー賞授賞式で、主演男優賞を受賞したウィル・スミスが妻の髪形をジョークにされたことに怒って、プレゼンターのクリス・ロックを平手打ちにしたことが話題となった。本書にはショーペンハウアーの「騎…
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「清少納言がみていた宇宙と、わたしたちのみている宇宙は同じなのか?」池内了著
清少納言が生きていたのはおよそ1000年前。オリオン座のβ星リゲルまでの距離が850光年だから、清少納言の少し後にリゲルから放たれた光を、今我々が見ていることになる。「枕草子」に「星は すばる。ひこ…
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「恥のきずな」カルロ・ギンズブルグ著 上村忠男編訳
ミクロヒストリア(小さな歴史学)と呼ばれる、小さな共同体やある個人に焦点を当てた新しい歴史学の動きが出てきたのは1970年代からだが、その代表的な著作がカルロ・ギンズブルグの「チーズとうじ虫」(19…
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「菌類が世界を救う」マーリン・シェルドレイク著、鍛原多惠子訳
多細胞生物の大きなグループとして、動物界、植物界、菌界の3つがある。本書の副題に「キノコ・カビ・酵母たちの驚異の能力」とあるように、菌界に属する菌類の代表的なものがキノコ・カビ・酵母である。世界には…
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「すごいトシヨリ散歩」池内紀、川本三郎著
ドイツ文学者でエッセイストの池内紀が亡くなったのは2019年8月30日。享年78。2016年3月から亡くなる直前まで3カ月に1回、評論家の川本三郎と対談を行い、それをまとめたのが本書。4歳下の川本に…
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「アウシュヴィッツ生還者からあなたへ」リリアナ・セグレ著 中村秀明訳
鶴見俊輔が「思想の科学」誌上で「語りつぐ戦後史」という対談企画を始めたのは1967年のこと。戦争体験を「語りつぐ」試みのかなり早い例だろう。76年には戦後生まれ人口が戦前生まれ人口を初めて上回り、現…
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「ヒュパティア」エドワード・J・ワッツ著 中西恭子訳
紀元350年ごろエジプトのアレクサンドリアに生まれたヒュパティアは天文学、数学にも造詣の深い哲学者で、その哲学講義は市民に大きな人気を得ていた。しかし権力抗争に巻き込まれ、修道士の一群に襲われて衣服…
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「アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険」宮田珠己著、網代幸介画
イングランドの騎士ジョン・マンデヴィルが記した(とされる)「東方旅行記」は、著者がコンスタンティノープル、エルサレム、バビロンなどを経てはるか東方の異世界を訪れ、旅先での見聞を記したもの。ここには、…
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「魚にも自分がわかる」幸田正典著
動物界の知性・社会性の階梯(かいてい)は霊長類、その他の哺乳類、鳥類、爬虫(はちゅう)類・両生類、魚類の順に劣っていくとされていた。しかし近年、鳥類は道具作り、推論、過去を記憶して未来について考える…
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「ぼくが歌う場所」中川五郎著
日本の第1次フォークソングブームは1960年代半ばに始まるが、東京圏のいわゆるカレッジフォークとは全く違った風が関西から吹いてきた。ザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」と高石ともやの…
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「ドードーをめぐる堂々めぐり」川端裕人著
「不思議の国のアリス」に「堂々めぐりと長い尾話」という一節がある。池に落ちたアリスが体を乾かそうと変てこりんな動物たちの一団とかけっこをするというもの。そこで賞品の代わりに指ぬきをアリスにあげる嘴(く…
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「『木』から辿る人類史」ローランド・エノス著 水谷淳訳
人類の文明は、石器時代、青銅器時代、鉄器時代の順に発達を遂げてきたというのが定説とされてきたが、ここには肝心な素材が抜けている。木材だ。著者はいう、「私たちの進化と文化の長い歴史に連続性を与えている…
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「すばらしい人体」山本健人著
およそ180年ほど前、世界で初めての実用的な写真撮影法、ダゲレオタイプが発明された。 それ以前の写真術に比べて画期的なものだったが、それでも露光に5~10分もかかり、撮影される人はその間、じ…
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「時間の解体新書」田中さをり著
20世紀初頭、イギリスの哲学者ジョン・マクタガートは「時間の非実在性」という論文で、時間が実在しないことを論証した。時間が実在しないとは、一体どういうことなのか? 緻密な議論を乱暴にまとめると、時間…
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「文明開化に抵抗した男 佐田介石 1818―1882」春名徹著
佐田介石という名前を初めて知ったのは40年近く前、松山巖の「土足と代用品」という文章(後に「まぼろしのインテリア」に収録)でだった。明治の文明開化期に天動説を唱え、ランプが各家庭に入ると16の大害が…
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「清少納言を求めて、フィンランドから京都へ」ミア・カンキマキ著 末延弘子訳
著者はフィンランドのヘルシンキ生まれ。ヘルシンキ大学で比較文学を専攻し、大手出版社の広告編集者として勤めていた。入社後10年余を経た頃、決まり切った毎日の生活に飽き、つまらなくて死にそうになる。この…
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「海獣学者、クジラを解剖する。」田島木綿子著
海獣とは海の哺乳類のことで、クジラ類(クジラ、イルカ、シャチ)、海牛類(ジュゴン、マナティ)、鰭脚類(アシカ、オットセイ、アザラシ、セイウチ)の3つのグループに大別される。海で暮らしているため調査自…
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「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」川内有緒著
目の「見えない」人と一緒にアートを「見る」。形容矛盾めいたタイトルだが、本書を読み進めていくうちに、これを矛盾と思ってしまうのは、先入見にとらわれた大いなる錯誤であることがわかってくる。 白…