<第3回>態度がデカい記者、気を乱す部外者に厳しい視線
【鉄道員(ぽっぽや) (1999年・東映)】
原作は浅田次郎。直木賞受賞作である。高倉健が演じたのはローカル線の駅長。「健さん」といえば背中に唐獅子牡丹を背負った侠客のイメージが強いが、本人は「市井の人の役に引かれる」と言ったことがあった。彼は本作と、焼きトン屋の主人を演じた「居酒屋兆治」(1983年・東宝)を気に入っていたのだろう。
この映画のロケは北海道、根室本線の幾寅駅で行われた。氷点下15度近い戸外で連日、撮影があり、雪も降っていた。それなのに、高倉健は建物の中に入ることもなく、腰かけることさえしなかった。スタッフ、共演者がいくら勧めても、「現場のにおいをかいで、楽しんでいるんだ」と言っていた。
わたしには忘れられないシーンがある。現場の囲み取材で、高倉健は「きびしくてやさしい」人柄を見せた。囲み取材の場所ではなぜか新聞社、テレビ局といった大企業の人間が当たり前のように、その場を仕切る。そして、彼らはものすごく態度がデカい。一方、スポーツ新聞、夕刊紙、フリーランスのジャーナリストといった人々は、なかなか質問することができない。