街歩きの達人 なぎら健壱に聞いた「いい酒場との出合い方」
で、次がオヤジ、女将の人柄。ブッキラボウでなきゃね。特別、愛想がよくなくてもいいし、おしゃべりが下手でもいいんです。噺家じゃないんだから。
でも、心の温かさってのは店の雰囲気にも料理にも出るもんでね。お客も、オヤジや女将に似た人が不思議と集まってくるんです。それがひいては居心地のよさになるわけですよ。もちろん、料理がおいしくなくっちゃね。うまい酒にはいい肴。飲んべえにとっちゃ、これはすごく大事。それでいて、安いに越したことはないけど、お値段はそこそこ。
アタシは、まあ、めったに行かないけど、銀座のバーでプレミアムウイスキーがワンショット2万円だとしても、決して高いとは思いません。下町じゃなく、銀座なんですから。場所、場所によって高かったり安かったりは、これまた当たり前なんです。
■とっておきの店を紹介しなくちゃならない自己矛盾
こんなふうに考えると3拍子4拍子、ぜーんぶ揃ってる店なんてのはそうそうあるもんじゃない。あったらナイショにしておくか、ごくごく親しい仲間にしか教えたくないのが飲んべえの心境なんだけど、アタシの場合、仕事柄、そうはいきません。とっておきの店でも時には雑誌やテレビで紹介しなくちゃならないってのが、大いなる自己矛盾でね。