43歳の既婚男性が“女装”に目覚めたワケ。疑似レズビアンの沼にハマり…#2
これまでのあらすじ
【不倫依存~婚外恋愛を謳歌する男女】
菜々美さん(28歳ホステス/独身)はアフターで連れて行ってもらった「女装バー」で、女装が趣味の直樹さん(43歳エンターテインメント関連/既婚・子供アリ)と知り合った。彫りの深い端整な面差しで歌唱力バツグンの彼に惹かれ、話が盛り上がる。
後日、菜々美さんの店にスーツ姿の直樹さんが訪れて――。
気になる第2話の前に、第1話はこちらでお読みいただけます。
イケオジぶりにうっとり
菜々美さんは語る。
「直樹さんが来店したとき、驚きと嬉しさ、何よりも『男性』としてのイケオジぶりにうっとりとなりました。ボトルも『菜々美ちゃんの好きな酒を入れて』と言われて、ヘネシーのVSOP(約4万円)をオーダーしてくれたんです。
黒服がヘルプの女の子をつけようとしたので、『今日は2人だけで』と断りました。
直樹さんと2人きりで、ゆっくりお話ししたかったから…。
――名刺、渡してなかったね。どうぞ。
ソファーに並んで座り、差し出しだされた名刺を受け取ると、大手エンターテインメント会社・Tの名が記されていました。
――Tにお勤めとは…直樹さんて、すごい方だったんですね。
――ははっ、単なる女装趣味のオジサンさ。
――オジサンじゃないわ。イケオジよ。女装姿も美しいし」
男性の姿でも魅力的
私はシャンデリアが灯るボックス席で、声をひそめて話し続けました。
ときおり、彼のひざが私のひざと触れあって、ドキドキしっぱなし。
男性の姿をしても、やはり端整な顔立ちは魅力的でしたから。
ほろ酔いも手伝って、女装を始めた経緯を教えてくれたんです。
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男性社員の女装コンテストがきっかけ
「きっかけは…月並みだけど、会社の社員旅行の宴会なんだ。現在ならアウトかもしれないけれど、当時は男性社員の女装コンテストがあったんだよ。チームを組んで、女性社員にヘアメイクをしてもらって、ステージではBGMに合わせてウォーキングやダンス、投げキッスなんかのセクシーアピールで大盛り上がり。結果、僕が優勝してね(笑)。
――直樹さんの美貌なら納得。で、そこから目覚めちゃったのね?
――そうだね。自分でもこっそりメイク道具を買って化粧をしたり、ウィッグや婦人服で変身することに興奮しちゃって…。ネットで検索すると、新宿二丁目の女装バー・スワンがヒットして、通い始めたんだ。もう10年になるかな。
――女の私でも嫉妬するほどきれいだもの。肌もツヤツヤだし。
――ひげはレーザー脱毛したんだよ。あと保湿と日焼け止めはマスト。
――あの…恋愛対象は?
――もちろん、女性さ。
ーー奥さんともラブラブ?
ーーいやあ、子供が生まれてからは、すっかり家族になったかな」
その言葉にホッとしました。少なくとも奥さまとはレスのようです(笑)。
出会いが『客とホステス』ではないので、私も気楽に話せるうえ、彼を知るほどに愛しさが募ってしまって…。
彼に会うたび惹かれていって…
その後、直樹さんは月に3回ほど来店するようになったという。
「出会いから2ヶ月、私は彼に会うたび惹かれていって…アフターでは食事や女装バーに行くこともありました。ある夜、スワンで女装をし、カラオケで美声を披露する彼が化粧室に立ったとき、『今がチャンス!』と私は彼の背中にそっと寄り添ったんです。
――直樹さん…あ、店ではナンシーね。ナンシーのこと、好きになっちゃった。結婚していても、好き…。
――私も菜々美ちゃんが好きよ。だから、あなたの店に通ってるの。
彼はオネエ言葉で返してきました。
――今夜、遅くなっても大丈夫?
――ええ、かまわないわ。
こうして、私たちは新宿のラブホテルに向かいました」
不思議な感覚に恍惚
菜々美さんは語る。
「驚いたんですが、直樹さんは『ナンシーとして、関係を持ちたい』と提案してきたんです。
つまり、女性同士…レズビアンいう意味です。
でも、体は男性ですから、フィニッシュだけは男女のそれとなります」
ドレスを脱ぐと、直樹さんは女性もののランジェリーを身につけていた。
そして、順番にシャワーを浴びて、事に及んだという。
「不思議な感覚でした。体は明らかに男性ですが肌はすべらかで体毛も薄い。艶のある低音ボイスで『菜々美、可愛いわ』などとオネエ口調で囁かれると、もうとろけそうで…。触れているだけでも幸せ。
本来は直樹さんと愛し合っているのですが、目をつむると、ナンシーという女性が脳裏に浮かび、女同士の触れ合いに恍惚となったんです」
デートを重ねるにつれ、菜々美さんは自宅マンションにも彼を呼ぶようになったという。完全に沼ってしまった彼女は――?
続きは次回。
(蒼井凜花/作家・コラムニスト)