綾瀬はるか主演「精霊の守り人」 世界観が成否の分かれ目
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
先週から、“放送90年大河ファンタジー”と銘打つ「精霊の守り人」が始まった。事前のPRで、主演が綾瀬はるか(30)であることは分かったが、「ファンタジーって何?」と思った視聴者は多かったのではないか。ざっくり言えば、「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」などのような、架空の世界での物語だ。
「精霊」の舞台となるのは新ヨゴ国。「太古、南の大陸にあったヨゴ国から、トルガル帝が民を率いて北の緑豊かな土地に移り、建国した」と言われて、ついていけないという人がいるはずで、決して万人向けではない。
綾瀬が演じるバルサは短槍使いの女用心棒。新ヨゴ国の第2王妃(木村文乃)が産んだ王子(小林颯)を、息子の命を狙う王様(藤原竜也)から守るために戦う。綾瀬のアクションシーンはなかなか見事で、かつて女座頭市を演じた映画「ICHI」を思わせる。いや、むしろスローモーションを多用しない分、こちらのほうがキレがある。
架空の世界での物語で重要なのが「世界観」だ。登場人物たちの人間像はもちろん、時代や場所、国家の歴史、人びとの生活や風俗といった無数の「設定」があり、その総体が「世界観」と呼ばれる。
今後、どれだけの奥行きと広がりをもつ、魅力的な世界観が提示されるのか。成否の分かれ目はそこにある。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)