大橋巨泉さん死去 テレビの巨人が託した「最後のお願い」
数々の人気番組を持ちながら、50代半ばに突然降板。日本人に「セミリタイア」という新しいライフスタイルも提示した。01年には政界にも進出(民主党比例区)していたが、翌年、党の決定に反対して議員辞職。05年に胃がんの手術をしてからは、がんの再発を繰り返し、亡くなるまで11年間もの闘病生活を送っていた。
それでも衰えなかったのがテレビへの情熱と、改憲へと突き進む安倍政権への強烈な批判精神だった。14年5月の本紙インタビューでは「僕は、ポピュリズムの権化のような安倍首相をまったく信用しない」「彼にとって、経済はムードをあおる手段に過ぎず、本当にやりたいのは憲法改正であり、日本を『戦争ができる国』に変えることでしょう。法衣の下に鎧を隠しているような男の言動にだまされてはいけません」「マトモな批判さえ許さない戦前みたいな“空気”を今の日本に感じる」と警鐘を鳴らしていたものだ。
絶筆となった週刊現代(6月27日発売)のコラムでは「このままでは死んでも死にきれないので、最後の遺言として一つだけは書いておきたい。安倍晋三の野望は恐ろしいものです。選挙民をナメている安倍晋三に一泡吹かせて下さい。7月の参院選挙、野党に投票して下さい。最後のお願いです」とつづっていた巨泉さん。その原点はかつて軍国少年だった戦時中に疎開先で米軍機の機銃掃射に見舞われ死にかけたことと、8月15日を境に世界が一変した敗戦体験にあったという。
昨年12月に亡くなった作家の野坂昭如氏、先日亡くなった永六輔氏に続く戦争を知る昭和ヒトケタ世代の訃報。その“遺言”は重い。