碓井広義
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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

攻めのEテレを象徴 「ねほりんぱほりん」のリアリティー

公開日: 更新日:

 本当は聞いてみたいけどなかなか聞けない話を、本人や当事者に直接聞いちゃおうというのがEテレ「ねほりんぱほりん」(水曜23時)だ。それを可能にしているのが人形劇。ゲストはブタに、聞き手のYOU(52)と山里亮太(39)はモグラに変身している。

 たとえば「元薬物中毒者」は、20歳で覚醒剤に手を出し、薬を打ちながら子育てをしてきた29歳の女性。「クラブに行けば簡単に手に入るんですよお」と語り、「吸引はどうやって?」と聞けば、「あぶりですね」とハキハキ答える。笑っちゃうほど赤裸々な告白だ。

 先週の「痴漢冤罪経験者」の話もびっくりだった。登場したのは人のよさそうな(見た目はブタだけど)53歳の男性。通勤電車の中でいきなり、「こいつ、痴漢です!」と若い女性に騒がれ、「私じゃない!」と言い張るが警察署に連行されて3カ月も帰れなかった。

 刑事からは「○ンタマ出したんだってな」と罵倒され、犯人扱い。結局、2年の歳月と600万円を裁判に費やした。その間に職を失い、家庭も限界状態に。無罪にはなったが人生は元に戻らない。いやあ、これはシンドイ。当事者自身が語るからこそのリアリティーだった。

 この夏、障害者をダシにして感動を生み出そうとするテレビを「感動ポルノ」と呼び、違和感を表明した「バリバラ」と並んで、“攻めのEテレ”を象徴する1本だ。

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