徹夜の撮影続き…学校の授業はおろか満足に眠る余裕もなく
アイドルタレントは、歌手デビューの年が同じだと同期と呼ばれ、「85年組」には斉藤由貴さん、中山美穂さん、南野陽子さんらがいた。同期といっても、学校や会社とは意味合いがちょっと違う。「ザ・ベストテン」に「歌のトップテン」などの歌番組で一緒になってもご挨拶する程度。テレビ局の廊下ですれ違っても、何人もの大人たちが隣に後ろについていて、電話番号を交換したり、親しくなるような機会はどこにもない。新人賞などの賞レースを争う宿命があった。
この頃の芸能界で歌謡大賞やレコード大賞といった大きな賞を取るには、その歌手の実力のみならず、事務所の力も大きく影響していたらしい。
私は所属していた事務所が小さなプロダクションだったこともあり、それらは自分にはおおよそ関係のないものと思っていた。それでいて賞レースには参加しなければならない。
――どうして私はここに立っているんだろう。
歌番組の収録などで、なんとなく、そう思うこともあった。子供の頃から憧れていた聖子さんのように「アイドル」にはなれた。想像と違って、戸惑うことも少なくなかったけれど、アイドルに憧れた一番の理由、お姫さまのようなドレスを着たいという願いも、ほどなくしてかなった。