ラジオで激白「いだてん」に5年間捧げたクドカンの恨み節
〈脚本ができるまでには5段階のプロセスがあるんです。白本→青本→準備稿→内容決定稿→決定稿。こうして脚本は完成するわけです。その間、何度となく時代考証などが行われるのです。“あの時代にこういう言葉はありませんでした”とか、“こういう文化はありませんでした”とか。明治時代の時代考証、スポーツ考証、熊本弁、浜松弁の考証とか、さまざまな考証が入ってくるのです〉
芸能ジャーナリストの芋澤貞雄氏が言う。
「もちろんドラマ制作において時代考証などは大切ですが、クドカンのような一流脚本家にとって、自分の作品に次々と手を入れられることは面白くなかったと思います。彼はラジオの中でドラマ1話当たり4日から1週間を要したと証言していました。それが白本が決定稿になり、脚本が表紙付きの台本となった時にはほぼ原形をとどめない“別の作品”になってしまったと彼は言いたかったのかもしれません。必然的に“クドカンテイスト”も薄まってしまったはずです」
クドカンは〈(NHKには)優秀なスタッフが何人もいて、収拾のつかなくなった私の脚本の情報整理を見事なくらい手際良くやってくれるのです〉と語っていたが、これを文言通りに受け取るのは難しい。自分の作品を“殺した”NHKに対する皮肉ではないか。
クドカンは言わずと知れた一流脚本家である。この5年の間に自分がやりたい舞台や作りたい音楽があっただろう。リスナーには、“失われた5年間を返して欲しい”とNHKに訴えかけるようなクドカンの悲痛な叫びに聞こえたのではないか。