「栄冠は君に輝く」作詞の加賀大介と松井秀喜の意外な縁
第19週で古山裕一(窪田正孝)は劇作家・池田二郎(北村有起哉)や長崎の医師・永田武(吉岡秀隆)と出会い、精神的にも完全復活する。続く10月26日からの第20週では、全国高校野球の大会歌「栄冠は君に輝く」を軸に物語は展開する。古山のモデル・古関裕而の集大成ともいえる一曲である。今回は、「雲はわき 光あふれて」と始まるこの曲の詞を書いた加賀大介という人物にスポットを当ててみたい。
全国高校野球を主催する「朝日新聞」が大会歌の詞を募集したのは終戦から3年がたった1948年初夏のことだった。同年4月、学制改革により、新制高校が発足。それに合わせ、全国中学野球は全国高校野球に改められた。そこで「朝日」は新時代の幕開けにふさわしい歌詞を広く一般から求めることにしたのである。
全国から応募があった5252編の中から最優秀作品に選ばれたのは、石川県の金沢地方貯金局に勤める高橋道子という女性の詞だった。実は、これは中村義雄という男性が書いたもの。中村は加賀大介というペンネームで短歌の会を主宰したり、ラジオドラマの脚本を手がけるプロの文筆家だった。賞金欲しさで応募したと思われるのが嫌で、婚約者の名前を借りたのである。賞金額は5万円。当時、金沢では家が建つというほどの大金だった。まもなく、2人は結婚。のちに中村は加賀大介に改名。道子夫人も加賀姓になっている。