柴咲コウに拍手 主演「35歳の少女」で“素の10歳”も見せる
柴咲コウ主演「35歳の少女」は奇抜な設定のドラマだ。25年前、事故で昏睡状態に陥った10歳の少女が目を覚ました。外見は35歳で中身は10歳。この“異形の少女”望美(柴咲)が主人公だ。
眠っている間に家族はバラバラになっていた。しかも、妹(橋本愛)はひねくれた性格のキャリアウーマンに、優しかった母(鈴木保奈美)は無表情の冷たい人になり、そして父(田中哲司)は別の家庭を持っている。何とも厳しい現実だ。
望美は初恋の人だった結人(坂口健太郎)に支えられながら、「元の明るい家族」を復活させるべく努力する。だが、容易に実現するはずもなく、妹からは「あの時、死んでくれたらよかったのに!」とまで言われてしまう。望美もつらい。
脚本の遊川和彦は「家政婦のミタ」などで見る側を驚かせてきた。異色の設定だからこそ描ける真実があるからだ。今回、伝えようとしているのは、人生が再び元の状態には戻れない、不可逆的なものであること。そして、変えられるのは「失われた時間」ではなく、「これからの時間」であることではないか。
それにしても難役に挑む柴咲に拍手だ。動き、表情、言葉の中に、「素の10歳の少女」と「35歳の女性として生きようとする10歳の少女」の混在が感じられる。誰もが手放しで楽しめるわけではないが、今期一番の問題作であることは確かだ。