著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

「大怪獣のあとしまつ」は東映と松竹の共同配給、クレジット表記に滲む舞台裏

公開日: 更新日:

 確かに筆者が見たシネコンでは相応に観客は入っていたが、上映中に笑う人はほとんどおらず、終わったあとも静かだった。この静かさがちょっと不気味だったが、こうも思った。笑いが期待されたかもしれない本作は、そもそも笑いを取ろうとしていないのではないか。

 笑いが空回りして、滑りまくっているのとも違う。主に首相や関係大臣たちの描写では、笑いを押し出そうとする気配はあるが、そこで発せられるのは「言葉遊び」、否「言葉荒らし」(言葉が秩序を乱す)のような感じがした。意味のまるでない、つまり、何の波及効果も期待しない「言葉荒らし」の猛攻撃である。

 その言葉の束は意外に緩くて奇態な描写の連なりとなり、ねじくれた空間性の現出につながっていく。そして、描写の連鎖は虚構としての現実描写とも境を接するパラレルワールドにも見えた。そこから政権のグロテスクな現実(これはリアルな現実)が二重写しになる。

 あくまで二重写しになるだけで、リアルな政治的風刺劇を目指したわけではない。笑いなどの見る者のわかりやすい感性にも落とし込まない。あるのは、底知れぬ悪意の塊とでもいおうか。その塊を観客はひたすら浴びまくることになる。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末