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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

Eテレ「美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室」時代を超越した“菩薩”である

公開日: 更新日:

 美輪明宏は現在87歳。この年齢で、Eテレ「美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室」という“冠番組”を持っていること自体がすごい。以前は単発だったが、この4月から月1回のレギュラーとなった。

 中身はいたってシンプルだ。スタジオには美輪と高瀬耕造アナウンサー。そこに仮面で目元を隠した相談者がやってくる。

 1人目は、唯一の肉親である母親との間に金銭トラブルを抱える30代男性。美輪は「心の縁は切れていますよ」と冷静に言い、「情念ではなく理性で」距離を置くようにとアドバイスする。

 次はメイドカフェを休職中の20代女性だ。小・中学校でイジメに遭っており、職場復帰に不安を持っている。美輪は「過去の記憶なんか、蹴飛ばしなさい!」と一喝。何より、自分を否定しないようにと諭していく。

 見ていて気づくのは、相談相手の話を聞くことに多くの時間を費やす会話術だ。しかも時々鋭い質問をすることで、彼ら自身に考えさせるのだ。美輪からの一方的なご託宣ではなく、一緒に見つけた「これからの道」だからこそ納得感がある。

 鮮やかな黄色の髪に、淡いピンクの衣装の美輪。厳しい言葉も柔らかな笑みを浮かべて語る姿は、やはり尋常の人ではない。

 かつて評論家の平岡正明は「山口百恵は菩薩である」と喝破した。山口百恵が“昭和の菩薩”なら、美輪明宏こそ“時代を超えた菩薩”である。

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