三宮「森井本店」の神戸牛のスジを使ったどて焼きはまるで霜降り牛の煮込み
元NBAのスーパースター、故コービー・ブライアントの名前は、父親が神戸牛を食べて感動したので「KOBE」と名付けたという有名な話がある。これをアメリカ流に発音すると「コービー」となるわけだ。そんな世界に冠たる神戸牛を気軽に食べられるほどアタシの財布に余裕はない。
そこで、神戸に来るたびに気になりながらも、ついぞ訪問できなかった100年酒場の名店「森井本店」に是が非でも潜り込むことにしたのである。
この名店と神戸牛がどんな関係があるかって? それはね、この店の名物どて焼きに使われている牛スジが神戸牛のそれなのだ。どて焼きならフトコロ不如意のアタシでも大丈夫。なにせアタシの体のほとんどはもつ焼きと牛スジでできているといっても過言ではないだけに、スルーするわけにはいきません!
予約もせずに駆け付けると、幸運なことに1席だけ空いていたカウンターに案内された。こちらの店の創業は大正7年。今年で107年目を迎える。店内は清潔で古さを感じさせない。金盃の看板と白鹿の美人画の広告が唯一歴史を感じさせるだけである。100年以上の歴史がある店とは言われなければわからないだろう。
店内をキョロ見しながらまずは生中(590円)と例のどて焼き(780円=写真)を注文。「熱いので気を付けてくださいね」。持ってきてくれたのは接客担当の4代目森井美穂さんだ。ご主人を10年前に亡くし、今では女将として店を切り盛りしている。話し掛けると気さくに答えてくれる。「酒場の女将がこんなに大変だとは思いませんでしたよ。早く5代目の娘に譲りたいんですけどね~」と、ケラケラ笑いながら話す姿に100年酒場の女将という威圧感は皆無だ。本当の名店とは実はこうしたものかもしれない。敷居の高いどこぞの老舗にはない気さくな雰囲気が長く酒飲みたちに愛されるゆえんだろう。