南野陽子が障害者劇団の舞台に主演 見た人に「優しい気持ち」持って帰ってほしい

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自分の気持ちの赴くままに、本当にやりたいことを

 ──今回の作品は福島が舞台ですが。

「私の役は福島にある障害者施設の作業長。セリフが膨大だし、時間軸も過去現在を行き来するし、狂言回し的な役割と登場人物を切り替えなければならないので結構大変です。いつもなら稽古に入る前にセリフは入れることにしてますが、今回はあえてその場で出てこないセリフは言わないようにしているんです。自分が役になり切ったら、自然とセリフも出てくると思うので。ちょっと冒険かもしれませんね(笑)」

 ──今回の座組は?

「初めましての方ばかりですがチームワーク抜群です。ある日の稽古で私がセリフに詰まったのを見て、障がいをもつ桜座の劇団員が台本に付箋をして渡してくれたんです。付箋はセリフが出なかった箇所。『何にもしてあげることができないからせめてこれくらい』とおっしゃって。その心遣いにとっても感激しました」

 ──最近、断捨離に励んでいるということですが。

「両親も亡くなったので実家も3年ほど前に閉めて、その時、両親が集めてくれた私の賞やトロフィーや切り抜き、ポスターなどはほとんど処分しました。私は子供のころからピアノ、語学、着物の着付け、ワインのソムリエなど30以上の習い事をしてきて、おまけにコレクターみたいなところがあって、楽器にしても琴や三味線、琵琶、ピアノ…と何十個も集めたりしていたくらいで、捨てるのが苦手だったんですが、もうモノにこだわらなくてもいいかなと思い始めて。福島では大震災ですべてを失った方もいらっしゃいますよね。そんなことを考えると、モノを残してもしょうがないかなと…。思い切って処分したら気持ちが自由になりました」

 ──これからやりたいことは?

「生意気と言われたりしたこともあって、40代くらいまでは割と自分の気持ちを抑えて仕事してきたので、50代半ばになった今は自分の気持ちの赴くままに、歌や小劇場やちょっとしたボランティアなど自分が本当に興味が持てることや、やりたいことに絞っていきたいなと思っています。この前のオーケストラとのコラボも今回の舞台も事務所を通さずに自分で決めたことなんです」

 ──この舞台で伝えたいことは?

「人間にとって大切なことをさりげなく表現した舞台なので、お芝居を見た人が劇場の帰りに『点字ブロックを踏まないようにしよう』とか『目の前にお年寄りがいたら席を譲ろう』とか、人に優しい気持ちになれるとうれしいですね」

(聞き手=演劇ジャーナリスト・山田勝仁)

南野陽子 1984年、ドラマ「名門私立女子高校」で芸能界デビュー。1985年に「恥ずかしすぎて」で歌手デビュー。主演したテレビドラマ「スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説」でトップアイドルに。歌手として「はいからさんが通る」「吐息でネット」などがオリコンシングルチャート8作連続1位を記録。ドラマ、舞台など250作に出演。映画「寒椿」「私を抱いてキスして」で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞。愛称ナンノ。

横浜桜座
 座間市で障がい者の支援相談や訪問介護事業所を運営する一般社団法人グランツの代表・飯田浩志氏が2013年に立ち上げた劇団。メンバーは主に知的障がいを持つ俳優30人。サポートスタッフ約10人で活動している。2017年からはプロの俳優との共同公演も行っている。

◆「なくなるカタチとなくならないキモチ」(作=大西弘記、演出=磯村純)は10月7~16日、下北沢・駅前劇場で上演。出演は南保大樹、白幡大介、館野元彦、甲津拓平、藤夏子ほか。10月18、19日は横浜ラポールシアター、21~23日は大阪インディペンデントシアター2ndで上演。

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