歌舞伎俳優研修出身・中村芝のぶここにあり 吉例顔見世大歌舞伎で強い印象を残す
歌舞伎座昼の部は、インド神話を題材にした『マハーバーラタ戦記』。2017年に新作として上演されたものを、改作しての再演。主演の尾上菊之助以外は、キャストも一新されている。
特筆すべきは、敵役のヅルヨウダ王女を演じた中村芝のぶだ。役者の子ではなく、国立劇場の歌舞伎俳優研修出身で七代目中村芝翫の弟子となった女形だ。普段の大歌舞伎の公演では、腰元などでセリフも少ない役しかまわってこないし、チラシに顔写真が載ることもないので一般的な知名度は低いだろう。
最近では菊之助の新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』や『ファイナルファンタジーX』でも比較的大きな役に抜擢されたが、今回は全体の中で、菊之助演じるカルナに次ぐ、重い役に起用された。
17年の公演では中村七之助が演じた役である。清純かと思うと妖艶で、正義の人のようでいて陰謀家という難役を、その場その場で的確に演じ分けている。
カルナと敵対するアルジュラ王子は、前回は尾上松也が演じたが、中村隼人が抜擢された。5月の明治座以降、隼人は猿之助の代役で主役をつとめてきたが、それに続いての大役だ。野心家で戦闘的だが、苦悩するナイーブな面も持つ青年は適役。