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てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか。貴重な証言を収録した「芸能界誕生」(新潮新書)。伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」を基に描く青春群像ノンフィクションノベル「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記」(双葉社)。2つの最新著が絶賛発売中!

伊武雅刀は渋い声と丁寧なこだわりで夢を掴み取ったのだ

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 転機になったのは「声」だ。その渋い美声を買われ、渡辺貞夫のジャズ番組に起用されたことをきっかけに、声優の仕事も舞い込むようになっていった。だが、彼が目指すのはあくまで俳優。金は稼げるようになっても、夢と現実のギャップに苦しんだ。

 そんなときに出会ったのが「FM東京のヌシ」のように毎日、局に来ていた小林克也だった。そうして桑原茂一と小林がやっていたラジオ番組「スネークマンショー」に出演することになったのだ。

 当初はウルフマン・ジャックというキャラクターが曲紹介をする音楽番組だったが、伊武が参加するタイミングで、コントドラマが始まった。「自分たちが面白いと感じたもの、伝えたいと思ったメッセージを、手作りのおにぎりを作るように丁寧に丁寧に気持ちをこめて」(同前)つくると、人気が出た。

 冒頭の番組でも「ホテルニュー越谷」というフレーズの「越谷」を決めるのに、ものすごく真剣に悩み、時間をかけたと述懐している。この人気がきっかけとなり、役者の仕事が入ってくるようになった。

「うまくやれなくて遠回りしたことで『伊武さんの経歴は異質ですね』と言われるけど、そのおかげでいろんなことが繋がってる」(マガジンハウス「POPEYE」23年10月号)

 伊武はその声とこだわりで夢を掴み取ったのだ。

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