加橋かつみさんが憧れたストーンズ「サティスファクション」はザ・タイガースの原点でもある
僕はメンバーに話をして独立する準備を進めていました。でも、ダメでしたね。契約書にサインしないのは僕だけでした。
そんなある日、楽器店のビルで新曲のリハーサルをやっていた時のことです。休憩時間に部屋のドアが開いたんです。目の前にはちょうどエレベーターがあった。僕はそれに引き込まれるように乗って下に降りました。そして、そこにタクシーが止まっていたので、そのまま乗っていました。
僕がいなくなって、入っていたスケジュールがキャンセルになり、大変だったようです。今だから話せることですけど。
60年代から僕が聴いていたような音楽が出てきたのは戦争があったからです。ベトナム戦争のしわ寄せです。僕もその辺はいつも気にしていた。タイガースをやめた年の暮れには反戦を訴えるミュージカル「ヘアー」をアメリカから持ってきて、公演しました。
民主主義って何かを考えることがあります。民主主義は多数決だけじゃないんです。人の尊厳を理解、尊重すること。それが僕の生き方の一番のべース。それも大切なのは哲学といった理屈じゃなく、音楽や芸術を通して心の感性に訴えていくことだと思っています。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)