『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』独裁者に心酔し国民を戦争と虐殺に駆り立てた男の末路
「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開中
共和党支持者は「トランプはディープステートと戦っている」と主張し、立花孝志は「黒幕は竹内元県議だ」と声を張り上げた。彼らの言説を信じた有権者によって、トランプと斎藤元彦は再選された。「真実とは何か?」と首をひねりたくなる。
映画「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」(監督・脚本 アヒム・A・ラング)の宣伝コピーは「真実は私が決める」だ。ナチスの宣伝大臣としてヒトラーを支えたヨーゼフ・ゲッベルスが情報操作で大衆をだました経緯を中心に、ナチスドイツの隆盛と滅亡を描いている。彼とヒトラーの相互依存や他の閣僚たちの嫉妬と足の引っ張り合いが興味深い。2024年のミュンヘン映画祭観客賞を受賞した。ドイツとスロバキアの合作だ。
物語はソビエト軍がベルリンに迫った1945年3月から始まる。末期的な戦況の中、ゲッベルス(ロバート・スタッドローバー)は「ここを持ちこたえればヒトラー総統は伝説になる」と言い張るが、内心は敗戦の覚悟を決めていた。
時はさかのぼって38年3月。ゲッベルスはヒトラー(フリッツ・カール)が地方から凱旋する大イベントを取り仕切り、その一方でリダという美人女優を口説いて愛人にする。ところがリダとの関係を妻のマグダ(フランツィスカ・ワイズ)が察知。ゲッベルスは妻に「リダを愛してる。彼女と結婚したい」と本音を告げる。