紀州のドンファン事件「完全犯罪」と須藤早貴被告の命運…「ロス疑惑」の二の舞はないのか
妻に多額の保険金をかけて殺したのではないか。1985年、メディアが大騒ぎしたためもあって、警視庁は三浦を逮捕・起訴した。状況証拠だけで有力な物証も自白もなかったのに1審は有罪。私は週刊現代の編集長だったが、2審判決の前に、「状況証拠だけでは無罪」と誌面で主張し、その通りに逆転無罪判決。最高裁まで持ち込まれたが、2003年に無罪が確定した。
須藤は、札幌市の男性(当時61)から約2980万円を詐取した件でも訴えられているが、「私の体を弄ぶために払ったと思う」と、カネを受け取ったことは認めている。
須藤が体を武器に、男たちからカネを巻き上げてきた“性悪”であることは間違いない。数十億といわれた資産目当てに野崎と結婚したが、離婚するといわれて殺しを計画したという“推理”も成り立たないわけではない。
しかし、須藤の弁護士が冒頭陳述でこう述べている。
「あやしいから、やっているに違いない。もしそう思ってしまうなら結論が決まり、この裁判をやる意味はありません」
「疑わしきは罰せず」は刑事訴訟の基本原則である。検察は裁判員たちの情に訴えるのではなく、確たる証拠を示して有罪判決を勝ち取るべきであることは言うまでもない。 (文中敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)