課題は“誤診”と医師選び 「慢性胃炎治療」の意外な落とし穴
胃とは関係ない病気も引き起こす。慢性胃炎があると、サイトカインも放出され続ける。サイトカインは全身の血管を巡って免疫の働きを狂わせ、慢性じんましん、慢性頭痛、悪性リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病といった病気の原因になる。
血管も傷つけられるため動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中のリスクもアップ。また、脳神経系にも大きな影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2倍になるという報告もある。
まさに“万病のもと”といえる慢性胃炎をしっかり治すには、ピロリ菌を除菌するしかない。
「ピロリ菌を除菌すると、半年ほどで慢性胃炎はなくなります。すでに萎縮性胃炎になっている人も、10年弱で胃の粘膜が再生して萎縮が改善します」(江田氏)
■万全を期すなら他の検査法も
ただ、慢性胃炎の治療には落とし穴がある。これといった自覚症状が出ないため、気づかずに放置している人が多いこともそうだが、“誤診”も少なくないという。
現在、全国の都道府県で「ABC検診」と呼ばれる胃がんリスク検診が行われている。「ピロリ菌感染の有無」と「ペプシノーゲン検査」(胃粘膜から分泌されるペプシノーゲンの血中濃度を測定し、萎縮の進行度を診る)により、胃がんにかかりやすい人をスクリーニングする有益な検診といえるが、これだけでは感染を見落とすケースがあるという。