伝説のサラリーマン投資家 日本株はバブルと呼ぶには程遠い「儲けるチャンスは大あり」
PC(web)を使いこなせないとダメ
──個人投資家の投資対象として、TOPIXのETFは選択肢の一つのようですが、そのメリットをもう少し詳しく教えてください。
なんといっても手数料が安く(ほぼゼロ)、日本株に投資できることです。日本株はこれまで急騰してきましたが、まだ割安で金利がゼロに近い預金より有利だと私は思っています。世の中では「オルカン」(オール・カントリー)がはやっているようですが、こっちは全世界の株式に格安な手数料で投資できるとても優れた投資信託です。でも為替リスクがあり今は円安なのでかまいませんが、将来円高になると為替面で損失が発生します。
──新NISAへの投資は初心者も多いようですが、投資初心者が注意すべき点はどのあたりですか。
私の理解では新NISAで買える商品は金融庁がちゃんと精査しており、極端なぼったくり商品は排除されていると思います。それでも金融機関の人と相談すれば比較的手数料の高い商品を勧められるでしょう。基本金融を学ぶためにはパソコン(web)を使いこなさないとダメです。PC(web)を使いこなさないと、どうしても仲介人が存在することになり、手数料を取られる羽目になります。70代でPC(web)がうまく使えないという人は投資など考えるべきではないと思います。「カモ」になるだけですから。もちろんPC(web)の中は詐欺であふれかえっています。できるだけ若いうちから金融のリテラシーを上げていかないと、シニアになってから投資どころではなくなります。
■暴落時に持ち株は絶対に売らない
──個別銘柄選びで大切なことは何でしょうか。
ネット証券に口座を開いて自分で選んだ銘柄を買いたいという人は、私の本に「小型株投資」で大きく儲ける方法について詳しく書かれていますので参考にしてください。ただシニアの方で配当金を目当てに投資したいという方にはREIT(不動産投資信託)なんかも投資対象として面白いかもしれませんね。なお私はSNSをやりませんので、私を名乗るアカウントはすべて詐欺です。
──著書では、さまざまな失敗例も書かれていますが、個人投資家が陥りやすい失敗とは?
「株は儲かるらしい」と周りにあおられて買ってしまって、その後暴落した時にパニックになって売ってしまうことです。これは株式投資ではもっとも愚かな行為で、絶対に避けなければいけません。本当は暴落時にさらに株式を買い増すのが成功への道ですが、個人投資家の方には精神的なハードルが高いかもしれません。また暴落した株を買おうと待ち構えていたとしても、「もっと下で買おう」と思っているうちに株価が反発して買いそこなうかもしれません。でも少なくとも暴落時に持ち株を絶対に売らないようにしてください。
(聞き手=矢田正人/日刊ゲンダイ)
▽清原達郎(きよはら・たつろう) 1981年に東大卒業後、野村証券に入社。スタンフォード大学で経営学修士号(MBA)を取得し、86年野村証券NY支店に配属。91年ゴールドマン・サックス証券東京支店に転じ、その後、モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、98年タワー投資顧問で「タワーK1ファンド」を立ち上げ。2023年に運用を終了。