中小企業に「税金滞納」倒産が急増している理由…1~8月で前年同期比127.7%、年間200件超え
金融機関は日銀の金利引き上げ傾向に、貸出金利の見直しを始めている。日銀が3カ月ごとに行っている主要銀行貸出動向アンケート調査でも、中小企業を中心に倒産する企業の増加から、新たな貸し出しに対する融資態度は低水準に移行している。結果、資金調達に苦慮する企業が増えてきているのだ。
「貸し出しをコロナ前の厳しい審査体制に戻す金融機関が増えています。業績不振から抜け出せない企業は、運転資金の確保に追われ納税が遅れるケースが増え『レピュテーションリスク』にさらされる。情報を入手した金融機関は貸し出し、返済条件を見直すケースも出てきているようです」(前出の松岡氏)
「レピュテーションリスク」は、企業にとってマイナスとなる評判や評価が社会に広まり、特に経営難や、税金の滞納情報など、企業価値や信用の低下を招くリスクだ。
金融機関は年金機構が行っている売掛金などの財産調査データを入手しており、融資企業が税金を滞納している事実を把握すれば、取引条件や取引そのものの見直しは避けられなくなる。税金などの滞納期間が長引き解消できない場合、資産や銀行口座の差し押さえや債権譲渡が実行される。
8月の企業倒産件数は723件と、前年同月を上回っていた連続記録は28カ月でストップした。しかし、「税金滞納」倒産は今後も増えると予想されている。
(木野活明/経済ジャーナリスト)