選手の醜態報じず…日本のスポーツを歪めるマスコミの罪

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「ダメだな最近の立ち合いは。とくに番付が上の力士がよくないね」

 こう苦言を呈するのは好角家の澤井廣量氏(寺田病院名誉院長)だ。

 稀勢の里高安人気に沸く大相撲名古屋場所。10日の結びの一番は、日馬富士正代の対戦だった。正代に5戦5勝の日馬富士は押し出しで負けて痛い連敗となったが、横綱の立ち合いは右手が仕切り線に触れたか触れないかわからない、曖昧なものだった。

 冒頭の澤井氏が言う。

「確か、審判部は昨年も立ち合いの厳格化や土俵上の所作を見直す方針を打ち出したはず。にもかかわらず、今も立ち合いで両手をしっかりつかない力士は多い。琴奨菊の立ち合いなんていい加減なもんです」

 ルール軽視はプロ意識の希薄さともいえる。

 男子ゴルフでは先週、池田勇太(31)が規則で14本までと決められているクラブを1本多くバッグに入れてスタートし、クラブ超過のペナルティーを科せられた。今季は女子プロで同じ「事件」が2度も起きている。4度の賞金王になった中嶋常幸は「プロゴルファーにとってクラブは武士の刀のようなもの」とよく言う。大事な「刀」の本数を自分で確認せずキャディー任せにしているからこんな失態を演じるのだ。

「クラブ超過も相撲の立ち合いも同じです。『プロとしてあるまじき行為』とマスコミが厳しく報じれば、当事者は反省するのに、相撲は勝ち負けだけ、ゴルフもクラブ超過がありました、で終わり。だから同じことが繰り返されるのでしょう」(前出の澤井氏)

 マスコミの甘さということでは、巨人に関する報道もそうだ。「プロ野球 球団フロントの戦い」の著者でもあるスポーツライターの工藤健策氏がこう語る。

「今季の巨人は13連敗などもあってBクラスに低迷している。それは、親会社や球団が監督未経験の高橋由伸を就任させたことや育成をおろそかにしてきたツケが一気に出たからです。読売上層部は高橋監督の責任は追及できないので、堤GMをクビにして、ファンの批判をかわそうとした。本当の低迷原因を知っているマスコミは、そのようなことは一切指摘しない。現場の担当記者には、記者魂というものがないのでしょうか。巨人がボロボロになったのは、巨人という球団が合理的な判断で物事を決められないからです。そして、その事実に目をつむっているマスコミにも大きな問題がある」

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