地位に恋々…? 2場所連続休場の鶴竜に欠けた横綱の潔さ
「厳しいことを言われても仕方ない。いい結果を出さないといけない。万全にして出たい」
4日目の12日から休場した鶴竜(31)がこう言った。3日目の北勝富士との一番で右足首を痛め「右足関節外側靱帯損傷」と診断された。約3週間の安静加療を要するとの診断書を相撲協会に提出したが、これで鶴竜の休場は2場所連続7度目。14年5月場所で横綱に昇進後、実に6度目の「お休み」だ。
さすがに師匠の井筒親方もまずいと思ったのだろう。次に出場する場所で進退を懸けることを明言したが、今すぐ引退するべきだ。
鶴竜と比較するのもおこがましいが、昭和の名横綱栃錦は、昭和35年5月場所3日目が最後の取組となった。引退直前5場所の成績は、優勝2回に準優勝3回。「衰えてから辞めるのは本意ではない」という師匠(春日野親方=横綱栃木山)の教えを守り土俵を去った。その師匠も現役時代は、3場所連続優勝の翌場所に「今が華だから」と言ってスパッと引退した。
昔の横綱は、最高位に就いたその日から引退する日のことを考え、「ぶざまな姿は見せられない」と肝に銘じ、厳しい稽古をした。そして、皆が「まだ早い」と思うほど潔い引退を、好角家たちは「桜の花の散るがごとし」と評したものだ。