“阪神の怪物新人”佐藤輝明に見る金本監督時代の「超変革」
それにしても、阪神はどうしたのだろう。かつての阪神といえば「帯に短し襷に長し」の小器用なピストル打者を大量生産することが特徴だったのに、近年は大山と佐藤といい、2年目の井上広大といい、大砲タイプを次々に輩出している。
これについて思い出されるのは金本知憲前監督だ。2016年に就任した当初の金本監督は超変革をスローガンに掲げ、若手選手の積極起用を推進。中でもドラフト戦略は金本監督以前と以後では大きく変わった。以前はドラフト1位を即戦力投手で固めることが多かったが、金本以降の6年間のドラフト1位は6人のうち4人(高山俊、大山悠輔、近本光司、佐藤輝明)が野手。高校生投手の西純矢を1位指名した19年も、2位は先述した井上広大だった。
その結果、大山と近本が中心選手に育ち、佐藤が新たな注目を集めている。その意味では、近年の阪神の変化とは金本時代に掲げられた超変革の一環とも考えられる。金本前監督がまき続けた種を、盟友・矢野燿大監督が育てているのだ。
これはもう、本気で期待するしかない。私は心配性だから、この佐藤の活躍を見せられても、ひょっとして他球団はわざと佐藤に打たせているのではないか、そうやってデータを収集しているのではないか、などと勘繰ってしまうのだが、考えすぎないようにしたい。