錦織の順調な復帰を支える新コーチとのさりげない“距離感”
フェデラー、ナダル、ジョコビッチの3強の高齢化、ネクストジェンと呼ばれる新勢力の台頭――故障不在中に進んだツアーの混沌を体感できた確信があるから、早い判断もできただろう。
バルセロナ決勝ではナダルが22歳のチチパスを倒すのに今季最長の3時間38分を要した。セルビア・オープンの準決勝で、ジョコビッチはロシアの新鋭アスラン・カラツェフに3時間25分の激闘の末に敗れた。世代交代の波は来ている。昨年の全米優勝のティエム、6大会優勝のルブレフ、20連勝のメドベージェフに疲れが見える一方、19歳のシネル、17歳のアルカラス、ポーランドからフベルト・フルカチュ……大会を勝ち上がる空気の中で、徐々に流れも見えてきている。
■近すぎず遠すぎず
もう一つ、昨年からコーチとして帯同するマックス・ミルヌイの存在も大きい。ミルヌイは身長196センチのサーブ&ボレーヤーで、ダブルスでの実績を持つ。錦織と極めて対照的な距離感が相性を生んでいるようだ。最初のコーチのダンテ・ボッティーニはジュニア時代からの関係で近すぎたし、マイケル・チャンは「為せば成る」の根性タイプで成熟した錦織には遠すぎた。43歳のミルヌイとは現役も微妙に重なっており、いま取り入れたいネットプレーのヒントもさりげなくもらえるだろう。男盛りに“さりげない関係”は居心地がいいものだ。すぐには勝敗に結びつかなくとも、面白い試合の先にタイトルも見えてくるだろう。