錦織の順調な復帰を支える新コーチとのさりげない“距離感”
テニスシーズンの到来だ。新型コロナウイルス感染は衰えを見せていないが、さまざまな制限下でツアーも熱を帯びてきた。全仏は1週間延期されて5月30日から、昨年は中止だったウィンブルドンは6月28日の開幕に向け準備を続けている。
■ツアーの混沌を体感
錦織圭が着実に前進している。一昨年の肘の手術、それに続くパンデミックによる変則日程という難しい状況を逆手にとって、目標をしっかり絞っている印象だ。
クレーコートシーズンに入った今月のバルセロナで2勝、ナダルに挑戦してフルセットの末に敗れた。3試合ともフルセットと相変わらず勝ち味は遅いが、ここでの収穫はデカい。クレーシーズンのゴールは全仏オープンだが、いまの錦織のゴールはそこではない。東京オリンピックの仮想目標より何より、故障前の自信を取り戻すのがカギ。そのために勝ち切る、力を出し切る、戦い切る――過去2度優勝のバルセロナで“やり切った感”があった。
体力的に消耗した中、ポルトガルのエストリル・オープンに急遽エントリーしたのも手応えを感じたからだろう。練習中に右脚を痛め直前欠場という空回りだが、眼下の課題を考えれば正解。この後、マドリード、ローマのマスターズ2大会、全仏が控え、そこでのチャレンジ機会を優先させたのは理にかなっている。